研究課題/領域番号 |
11J04341
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中根 崇智 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | G蛋白質共役受容体 / 構造生物学 / X線結晶回折法 / 膜蛋白質 / ハイスループット / ソフトウェア開発 |
研究概要 |
(1)受容体の生産 構造解析においては、安定な受容体を大量に生産することが不可欠である。しかし野生型の受容体は発現量が少ないうえ、極めて不安定である。初年度から扱っているGPCRに加え、大石(山形大学)らと共同で、苦味受容体TAS2R41の安定化と大量発現・精製に成功した。苦味受容体はnon-Class A GPCRであり、Class A GPCRとは異なる精製法が必要であった。 (2)受容体の結晶化 初年度に安定化した受容体(オレキシン受容体など)については所属研究室の浅田・辻本・豊田らによって結晶化が試みられたが、残念ながら結晶は得られていない。 (3)結晶回折用ソフトウェア開発、 GPCRを始めとする膜蛋白質の結晶は非常に小さく、回折能も弱いため、X線回折データの収集と処理には特別な配慮が必要となる。SPring-8/SACLAの平田らと共同して、以下のようなソフトウェア開発に取り組んだ。 ・マイクロフォーカスビームを使ったラスタースキャンによる結晶位置同定を効率化するソフトウェア ・X線自由電子レーザーを用いたフェムト秒シリアルX線結晶回折法に対応できる、高速な回折スポット検出・評価プログラム。GPGPUを利用した並列処理を採用することで、CPUのみを利用した従来のプログラムに比べ、既に20倍以上の高速化を達成している。 (4)ハイスループット化 初年度に開発した以下のソフトウェアを改良した。 ・出芽酵母における相同組換えを利用した変異体作成法を支援するプログラム ・蛍光ゲル濾過法による蛋白質の単分散性評価のための高速液相クロマトグラフィー(HPLC)データの処理ソフトウェア。抗体―受容体の結合も評価できるようにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に続き、GPCRの安定化と大量生産を行って結晶化を試みたが、回折能のある結晶は得られなかった。 蛍光強度から推測される発現量や蛍光ゲル濾過法における単分散性は良好であるが、これらは結晶化のための必要条件ではあるものの十分条件ではないと考えられ、さらなる改善が必要である。 回折データの収集や解析を支援するソフトウェアの開発はきわめて順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
ソフトウェア開発を継続して行い、SPring-8のビームラインへの導入など、より多くの人が利用できるような形を目指す。 多くのGPCRの構造が利用可能となったので、GPCRの構造機能相関(特にG蛋白質の選択性・リガンドの特異性)について、計算科学的手法も取り入れて検討したい。
|