研究課題/領域番号 |
11J04352
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
玉田 宏美 早稲田大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | カハールの介在細胞 / c-Kit / 粘膜下神経叢 / 近位結腸 / モルモット |
研究概要 |
研究課題である、漿膜下カハールの介在細胞(ICC-SS)の発達が著しいモルモット近位結腸において、粘膜下神経叢(Submucosal Plexus)に分布するサブタイプ(以降ICC-SP)の存在が予備実験で明らかになった。このICC-SPについては、これまでほとんど研究がなされていない。そこで、ICC-SSと同様、近位結腸の筋層外に分布するサブタイプであるICC-SPを形態学的に解析することで、ICC-SSを含む近位結腸のICCの理解につなげることを目的とした。研究方法としては、ICC-SPの分布や微細構造上の特徴などを明らかにするため、c-Kitによる免疫組織化学的手法、さらに電子顕微鏡観察を用い、細胞組織学的に解析を行った。ICC-SPは近位結腸の粘膜下神経叢の位置で非常に発達したネットワークを構成しており、粘膜下神経節周囲のみならず、結合組織中、粘膜筋板直下、血管の近傍に位置することが明らかになった。電子顕微鏡によって観察された微細構造上の特徴は、カベオラ、中間径フィラメント、発達したミトコンドリア、大きなgap junctionなど、これまで報告されてきた筋層内の典型的なICCのものと共通しており、c-Kit陽性であることのみならず、微細構造レベルでも、この位置でのICCの存在が明らかなものとなった。近位結腸は、水分、電解質の吸収が盛んな部位であり、ICC-SSがその調節に関わるものとして推定しているが、ICC-SPは、とくに粘膜面での吸収、分泌の調節を行う神経系である粘膜下神経叢に位置し、また、血管の近傍に位置することからも、ICC-SSと同様に、水分、電解質の吸収の調節との関与が推定された。また、粘膜筋板に近接することから、それらの収縮への関与も考察された。さらに、近位結腸では、固有のペースメーカー細胞として筋層下神経叢のICC(ICC-SMP)が報告されているが、それらとも近い位置関係にあることも示唆され、近位結腸の運動調節機能のより詳細な解明にもつながるものと考えられる。本研究内容について、国際誌への論文投稿、国内での学会発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
筋層外のICCのサブタイプとして、漿膜下のICCのみならず、粘膜下神経叢にもその存在を見出し、さらには、電子顕微鏡による微細構造の特徴を初めて明らかにした。ICC-SSの推定機能を含む、今後のICCの機能解析へと大きくつながるものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
カルシウムイメージングを用いて、ICC-SSへの直接的なアプローチを進め、推定機能の証明につなげる。さらにICC-SSの受容体に関する形態学的な解析を進めると共に、有力な手掛かりとして、同じ部位に発達して存在するICC-SPについても引き続き取り組み、近位結腸におけるICCの機能について、特に水分・電解質の吸収との観点から、統合的に考察を進める。
|