研究課題/領域番号 |
11J04382
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
貝塚 亙輔 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ナノクラスター / 高分子カルセランド型触媒 / 不均一系触媒 / 酸素酸化反応 / 連続流通システム / 高温高圧系 / 酢酸エチル |
研究概要 |
筆者らは既に、ポリスチレンを基盤とする高分子を一次担体、カーボンブラックを二次担体とした二元金属ナノクラスター触媒がアルコール類の酸素酸化反応に有効に機能すること、金属の組み合わせによって生成物を作り分けることが可能であることを見出している。今回、多段階反応の集積化を目的とし、本触媒系を連続流通システム、高温高圧系といった種々の反応場に適用した。 その結果、気相-液相-固相での多相系連続流通システムによるアルコール類の酸素酸化反応において、金/白金二元ナノクラスター触媒(PI-CB/Au-Pt)を用いることでアルコールから対応するアルデヒド、ケトンが、金/パラジウム二元金属ナノクラスター触媒(PI-CB/Au-Pd)を用いることで対応するメチルエステルが高選択的に得られることを見出した。連続流通システムを用いることでバッチシステムと比較して高い反応性、選択性を達成した。また、PI-CB/Au-Ptは長時間の使用において活性の低下がみられたものの簡便な洗浄によって再生が可能であり、PI-CB/Au-Pdは10日間以上の連続使用でも活性の低下は見られなかった。 さらに、オートクレーブを用いた高温高圧系において、PI-CB/Au-Pdを触媒とする酸化的直接エステル合成が、塩基を添加することなく円滑に進行することを見出した。特にエタノールを出発原料とすることで、酸化的直接エステル合成による酢酸エチル合成が可能であることを見出した。エタノールは酢酸やアセトアルデヒドといった従来の酢酸エチル合成の原料と異なりバイオマス資源から容易に調達可能であることから、本触媒系はグリーンケミストリーの観点から有用な酢酸エチル合成法であるといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多相系連続流通システムによるアルコール類の酸素酸化反応、オートクレーブを用いた高温高圧系反応のいずれにおいても、既存のバッチシステムを上回る反応性・選択性を達成した。これは、研究の目的として挙げた4つの目的のうち、高機能協奏触媒の開発およびそれを用いた気相・液相・固相での多相系流通系システムの開発の2つを達成したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
更なる反応の集積化を目指し、これまでに開発した高分子固定化二元金属ナノクラスター触媒を基とした多元金属ナノクラスター触媒の開発、種々の遷移金属触媒やLewis酸触媒の導入を行う。同時に、ナノクラスター触媒の構造の解明を目指し、電子顕微鏡、エネルギー分散形X線分析、X線吸収微細構造解析などの分光学的手法およびクラスターの質量分析など物理的手法を用いて明らかとし、これらが触媒活性、生成物の化学選択性に与える効果を検証する。
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