筆者らは既に、ポリスチレンを基盤とする高分子を一次担体、カーボンブラックを二次担体とした二元金属ナノクラスター触媒がアルコール類の酸素酸化反応に有効に機能すること、金属の組み合わせによって生成物を作り分けることが可能であることを見出しており、昨年度においては多段階反応の集積化を目的とし、本触媒系を連続流通システム、高温高圧系といった種々の反応場に適用した。一方、触媒の調製ロットによる活性の大きなばらつきが見られたことから、今年度はその解決に注力した。 金-白金二元ナノクラスター触媒の調製では、従来は前駆体である金錯体と白金錯体の物質量比を1:1で混合し、担体である高分子存在下で水素化ホウ素ナトリウムによって還元的に二元金属ナノクラスタ「を調製し、空気中にて加熱架橋することで、クラスター中の金と白金の割合がほぼ1:1である触媒が得られ、高い触媒活性を示していた。しかし、クラスター中の金と白金の割合について再現が得られないことがあったことから触媒調製法の再検討を行った。その結果、1)前駆体である金錯体と白金錯体の物質量比を1:1.5とする、2)還元剤を水素化ホウ素ナトリウムからより強い還元剤である水素化ホウ素リチウムとする、3)加熱架橋をアルゴン雰囲気下あるいは水素雰囲気下で行う、ことでクラスター中の金と白金の割合がほぼ1:1である触媒が得られ、従来とほぼ同等の活性を示す触媒が安定して得られることが明らかとなった。これより、クラスターを構成する金属元素の電荷状態が触媒活性に影響を及ぼしていると推測される。 金-パラジウム二元ナノクラスター触媒においても、加熱架橋における加熱温度を120℃から150℃とすることで、高活性の触媒が再現よく得られることが明らかとなった。
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