研究課題
近年活発に研究が行われたマルチフェロイクス物質では、電気と磁気の結合による非自明な交差相関応答が存在する。その動的側面をみると「エレクトロマグノン」があり、これは光の電場で励起したマグノンである。このアナロジーを考えればスピンと軌道が結合した系では、弾性波で変調した軌道によって励起する「超音波誘起スピン流」の存在が期待される。本研究の最大の目的は、スピン軌道結合系において、力学的外部摂動としての超音波を入射したときの非自明となる非対角応答を観測することである。本年度は昨年度立ち上げた超音波測定装置を用いてスピネル型酸化物MnV_2O_4における磁場下での弾性定数を系統的に測定してきた。そして力学応答を解析することによりMnV_2O_4における軌道揺らぎ及び、スピンと軌道の結合した揺らぎを見出した。そしてこのスピン-軌道揺らぎはKugel-Khomskii型のスピン-軌道交換相互作用に由来するものと原子内のスピン軌道相互作用に由来するものがあることを明らかにした。これらは磁性-弾性の動的な交差相関物性の理解に重要な役割を果たすと考えている。[PHYSICAL REVIEW B 87,085111 (2013)]また本年度は横波超音波振動子を複数個組み合わせることで、直線偏向から円偏向まで発生するセットアップの立ち上げを試みた。超音波の偏向制御により、ファラデー効果やカー効果の音波版、更に音波の二色性など興味深い非相反現象が観測される。このような音波の非相反効果は上記で定量的に評価できたスピン-軌道-格子の動的結合を介して制御・巨大化へと発展することが期待される。
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Physical Review B
巻: 87 ページ: 085111-1-085111-5
10.1103/PhysRevB.87.085111
巻: 86 ページ: 125142-1-125142-8
10.1103/PhysRevB.86.125142