研究課題/領域番号 |
11J04417
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木村 善一郎 北海道大学, 大学院・工学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 異種間電子伝達 / 微生物燃料電池 / メタン生成古細菌 / 電気生産細菌 / 細胞外呼吸 / 電子シャトル / UQ-10 / 細胞外UQ-10生産細菌 |
研究概要 |
微生物燃料電池(MFC)内に成立する「電気生産細菌・メタン生成古細菌間の異種間電子伝達による共生系」の存在を証明することを目的に研究を遂行し、本年度は(1)メタン生成古細菌と電気生産細菌の共生関係の証明、(2)細胞外ユビキノン(UQ)-10の発見を成果として得た。 (1)メタン生成古細菌を菌叢に含むMFCにメタン生成の特異的阻害剤であるプロモエタンスルホン酸塩(BES)を添加し、微生物群の呼吸活性の変化を観察した。BESの添加はメタン生成菌の活性を低下させたが、同時に電気生産細菌の活性をも低下させることを見出した。電池系内の電気生産細菌の活性がメタン生成古細菌に依存することは間違い無く、両菌種間に何らかの共生関係が成立している可能性が示唆された。 (2)本研究において構築した複合微生物系MFCの菌叢を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法及びキノンプロファイル法により解析した。両実験を比較した結果、MFC菌叢にはAlphaproteo綱細菌(UQ-10生産細菌)がほぼ存在しないにも関わらずUQ-10が全キノン量の10%を占めており、さらに検出されたUQ-10のほぼ全量が細胞外に存在することが判明した。UQ-10は呼吸鎖の電子伝達体であり、本来は細胞内に存在するが、この結果はUQ-10が細胞外の電子伝達体(電子シャトル)として、電池電極あるいはメタン生成古細菌への電子伝達に関与することを示唆した。更に、細胞外UQ-10生産細菌の分離に取り組み、新種の真正細菌であるRaoultella sp.1GB株の分離に成功した。 Raoultella属はGammaproteobacteria綱に属し、好気条件下ではUQ-8を生産するが、IGB株は嫌気条件下かつ電池電極や不溶態鉄などの固体基質を与えることでUQ-10を外分泌する性質を有していた。Alphaproteobacteria綱とは別の系統の細菌にUQ-10生産能及び外分泌能が確認された例は無く、IGB株の発見によりUQ-10の共有によって作られるMFC電子フローの存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の計画通り、電気生産細菌・メタン生成古細菌間に共生関係が成立すること、及びMFC生態系の電子フローをUQ-10が作り出していることを知見として得ることができた。一方で今年度予定していた電気生産細菌・メタン生成古細菌からなる二員培養系の構築は条件検討の結果、条件設定が極めて困難であることが判明し、断念した。
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今後の研究の推進方策 |
項目11に示した理由により電気生産細菌・メタン生成古細菌による二員培養系の構築を断念したため、代替案として以下の3項目を実施する。 (1)安定同位体標識法を用いて複合系MFC内で電気生産細菌と酸化還元カップルを形成しているメタン生成古細菌を同定する。 (2)メタン生成古細菌、電気生産細菌それぞれの呼吸阻害剤を添加したMFCを構築し、両菌種の活性を観察する。 (3)UQ-10を複合系MFCに過剰添加し、電子フローに与える影響を観察する。
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