研究課題/領域番号 |
11J04424
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺島 裕貴 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 計算論的神経科学 / 一次聴覚野 / スパースコーディング / 独立成分分析 / ハーモニー / トノトピー |
研究概要 |
過去の研究は、大脳皮質の一次視覚野(V1)、さらには一次聴覚野(A1)における効率的な符号化(スパースコーディング)を示唆している、しかし、同様の符号化戦略が他の領野でも有効なのかどうか、また、皮質表面上における空間配置を同時に考慮するモデルもまた普遍的なものかどうかという課題が残されている。そこで、(A)スパースコーディングのモダリティ間普遍性、(B)二次元地図を考慮したスパースコーディング、という2つの観点から、皮質感覚系モダリティ間の共通性と差異に潜む原理を探究していく。 (A)の観点からは、私の予備的な研究(Terashima & Hosoya 2009)を拡張し、より生物学的に妥当な条件下で評価した。この過去の研究は、サルA1のハーモニーに関連した神経反応を、元来V1向けに提案されたスパースコーディングと呼ばれる理論で説明し、両領野の情報処理戦略が共通であることを示唆した。しかし、モデルへの入力音は人工音であり、生物学的に妥当とは言えなかった。そこで、より妥当な入力音として対象動物であるマーモセットの鳴き声を用いても先行研究と同様の傾向を再現することを示した。得られた結果をNeurocomputing誌に発表した。 (B)の観点からは、A1とV1で近年発見された異なる機能的地図構造を統一的な観点から説明しようとした。V1では反応特性が皮質表面で滑らかな変化を示すのに対し、A1では乱雑である。この違いは両領野が異なる情報処理戦略を採っている可能性を示唆するが、私は同一の適応戦略が両方の地図を生成し得るという仮説を提唱した。かつてV1向けに提唱されたトポグラフィック独立成分分析を用い、その入力として自然画像ではなく自然音を用いることで、A1に似た乱雑な地図を生成した。得られた結果をNeural Information Processing Systemsで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)スパースコーディングのモダリティ間普遍性、(B)二次元地図を考慮したスパースコーディング、の双方の観点から有意義な結果を出し、学術誌に発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
観点(A)スパースコーディングのモダリティ間普遍性:引き続き、視聴覚以外のモダリティとの共通性を探っていく予定である。 観点(B)二次元地図を考慮したスパースコーディング:より詳細なモデル分析を行い、得られた知見を神経生理学へフィードバックしていく予定である。
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