研究概要 |
長期記憶の固定には、シナプス入力により流入したカルシウム(Ca^<2+>)が、CaMKK-CaMKIV経路を介して、転写因子CREBをリン酸化し、遺伝子発現を誘導すると考えられている。しかし、シナプス入力に対する、Ca^<2+>→CaMKK→CaMKIVカスケードの情報変換の活性化ダイナミクス(活性化時間、活性強度、空間分布)、について未だ理解が進んでいない。 また、この過程を明らかにするために、シナプス入力に伴い、核へとシグナルを伝達する様子を時空間的に解析する必要がある。しかし、これまでの刺激法では、細胞体も同時に刺激することになり、細胞体刺激とシナプス刺激を切り分けることが困難であり、空間情報を得ることができなかった。 研究計画の1年目の本年度においては、これまでに開発したCaMKK等のプローブを用い、樹状突起上のシナプスを特異的に入力し、遺伝子発現を誘導する方法を見出すための条件検討を実施した。培養海馬神経細胞を用いて、UVレーザーを用いた局所グルタミン酸光融解法により、シナプスから核へシグナルが伝達する刺激条件を最適化した。顕微鏡イメージングにより、UV光の強度や、刺激を入れるインターバルを変えることにより、刺激条件を検討した。その結果、樹状突起のみを刺激をするだけで、遺伝子発現を誘導することに成功した。予備的実験において、この刺激条件下における、Ca2+,CaMKK,CaMKIVの活性化ダイミクスを測定しつつある。 以上の結果を第34回日本神経科学大会および生理研研究会にて発表した。
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