研究課題/領域番号 |
11J04446
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
松岡 昌和 一橋大学, 大学院・言語社会研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | プロパガンダ / 第二次世界大戦 / アジア太平洋戦争 / シンガポール / 香港 |
研究概要 |
本研究は、日本占領下のシンガポールおよび香港においてプロパガンダがどのように行われ、どのような意味を持ち、どのように認識されていたかについて明らかにすることを目的とする。平成23年度は、史料の収集および、第二次世界大戦中に陸軍に徴用され「南方」でプロパガンダ活動に従事した「文化人」にフォーカスを当てた研究を行った。 史料については、国立国会図書館において「文化人」が徴用前後に著した図書・雑誌記事などの著作物を収集したほか、アメリカ合衆国国立公文書館所蔵のラジオ傍聴記録ならびに極東における諜報記録、シンガポール国立図書館所蔵の華字紙、シンガポール国立文書館所蔵のオーラルヒストリー資料、香港大学所蔵の日本軍政関係資料を中心に第二次世界大戦期の一次資料を多数収集した。 史料収集の傍ら、徴用「文化人」についての調査とその成果の公表を国内外で行った。平成23年5月には韓国ソウルにおいて、7月にはアジア教育史学会において、シンガポールでプロパガンダ活動に携わった「文化人」を3人取り上げ、その足跡を明らかにした。その内容は修正を施した上で『植民地教育史研究年報』誌上に発表した。また、7月にはオーストラリア・メルボルンにおいて日本国内における当時の音楽プロパガンダに関する議論を整理した上で発表した。その内容は平成24年に刊行される共著に収録される予定である。さらに、11月にシンガポールにおいて、平成24年2月にはマレーシア・クアラルンプルにおいて、3月には日本植民地研究会において、日本占領下シンガポールで活動した日本人漫画家に関する報告を行った。この内容についてさらに分析を進め、現在投稿に向けた準備を行なっている。 そのほか、平成23年9月から平成24年1月にかけてシンガポールに、平成24年2月から3月にかけて香港に滞在し、現地の研究者・文化行政担当者と面会し、今後の研究成果発表についての打診を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度においては、若干の研究計画の変更はあったものの、予定されていた史料収集を遂行することができ、また、研究成果についても、国内外で発表し多くの研究者の関心を集めることができた。特に、国外の研究者との密接な連絡ができたことにより、国際的な研究活動の可能性が大いに広がったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題最終年度となる平成24年度は、平成23年度に収集した史料をもとに分析を進め、研究成果の発表と研究論文の執筆に重点を置く。研究成果の発表については、5月に韓国ソウルにおいて一橋大学・ソウル大学校・ブリティッシュコロンビア大学共催のワークショップのほか、7月にはインドネシアで開催されるアジア歴史学者会議およびシンガポール国立大学で開催されるアジア研究所主催のフォーラムでの口頭発表が予定されている。また、11月には香港において複数の若手研究者とともに帝国日本の文化について研究発表を行うことを計画している。これらの研究発表をもとに、研究論文をまとめ、その一部は国内外の学術雑誌への投稿を計画している。
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