研究課題/領域番号 |
11J04511
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
水川 葉月 愛媛大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | ペット動物 / 有機ハロゲン化合物 / 水酸化代謝物 / 陸棲哺乳類 |
研究概要 |
動物病陛の協力を得て採取したペットのイヌ・ネコの血液を用い、ポリ塩素化ビフェニル(PCBs)とポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)およびその水酸化代謝物(OH-PCBs、OH-PBDEs)、メトキシPBDEs(MeO-PBDEs)を分析し、汚染実態の把握と蓄積特性の解明を試みた。その結果、ネコの血中OH-PBDEs濃度はイヌに比べ1~2桁高値を示し、残留傾向に種差のあることが明らかとなった。そこで、餌からの曝露経路を推定し、汚染物質の移行を明らかにするため、様々な種類のペットフード(缶詰、固形乾燥フード、パック詰めなど)を分析したところ、キャットフード中OH-PBDEs、MeO-PBDEs濃度はドッグフードより高値であることが明らかになった。さらに、キャットフード中OH-PBDEs濃度はMeO-PBDEsよりも低値であった。これらの結果より、ネコでは餌からMeO-PBDEsを取り込んだ後、生体内で脱メチル化しOH-PBDEsを生成していると予想され、OH-PBDEsによる毒性影響が懸念された。そこで、今後の課題としてネコの脱メチル化能実証試験を展開する予定である。 また、愛媛大学の生物環境試料バンクに冷凍保存されている様々な陸棲哺乳類(イヌ、ネコ、タヌキ、キツネ、ハクビシン、マングース、アライグマ、アナグマ)を供試し、血中に残留するOH-PCBs、OH-PBDEsおよびMeO-PBDEs濃度を測定したところ、動物種によって代謝物の組成パターンに違いが認められ、蓄積特性の種差が明らかになった。とくに、ネコは他の種と異なる血中水酸化代謝物の残留傾向を示したため、更なるサンプリングを計画し、詳細な解析を試みた。このような差異は肝臓の薬物代謝能力の違いに起因すると考えられたため、代謝実験を計画し、獣医師の協力のもと新鮮肝を採取した。ネコでは3検体の新鮮肝を採取し、これらを用いたPCBs代謝実験を開始した。 陸棲哺乳類の血中に残留する代謝物蓄積特性の結果は、国際学会で口頭発表するとともに、現在、原著論文を投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
陸棲哺乳類の代謝物蓄積特性および体内動態の解明に関しては計画通り遂行し、論文投稿にまで至っている。さらに、次年度以降に実施予定であった代調実験準備も始めることができた。ペット動物を対象とした代謝物の汚染実態および蓄積特性の解明とリスク評価に関しては、血液、ペットフードともに分析し、餌からの曝露推定と有機ハロゲン代謝物の残留傾向を明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の課題としてネコの新鮮肝を用いた脱メチル化能実証試験を展開する予定である。 さらに生物環境試料バンクに冷凍保存されている他の野生生物(イヌ、ミンククジラ、バイカルアザラシ、ラット、カニクイザル、カワウなど)の新鮮肝も供試して、PCBs、PBDEs代謝実験を実施し、比較生物学的な視点でネコのリスク評価を試みる予定である。 また、ペットのイヌやネコの血液およびペットフードの化学分析を継続するとともに、ハウスダストの分析も行い、ペットの曝露経路の推定を行う。
|