研究課題
本研究では、3ヶ年で「クマ類の絶滅リスク評価、現在と将来の生息分布予測モデルとその生態系復元計画の策定」を課題とした。まず、博士課程中において従事していた富士・丹沢地域個体群のツキノワグマを対象に、より精度の高い数理モデルを構築し、ツキノワグマの絶滅リスク評価と将来の予測分布シミュレーションを行い、次に都道府県ごとに異なる狩猟方針がツキノワグマの遺伝的多様性にどのような影響を及ぼすかを調査し、より抜本的な箱根への再導入や隣接した奥多摩地域の地域個体群とのエコロジカルネットワーク策定などをシナリオにした生態系復元計画を立案することを目的とした。これと並行して、日本全国のツキノワグマ、ヒグマを対象とするクマ類の生息分布モデリングに基づいた予測分布地図の作成と各地域個体群の生息頭数の予測を行うことを目的とした。具体的には以下のI. ~IV. の4つのサブテーマに分類できる。I. ツキノワグマの絶滅リスク評価と将来予測分布シミュレーションII. 狩猟方針が及ぼすツキノワグマへの遺伝的多様性の変化III. ツキノワグマを対象とした富士丹沢地域個体群を核とした生態系復元計画のシナリオ解析IV. 日本全国のツキノワグマ、ヒグマを対象とするクマ類の生息分布モデリングツキノワグマの絶滅リスク評価の初期段階として、ツキノワグマの南アルプス個体群を研究事例として、季節性がツキノワグマの空間分布に与える影響の評価を行った。ツキノワグマの生息分布予測にはMaxEntを用いた。生息地の選択性は、季節ごとに明らかな変化はなく、特に秋と夏は互いに類似した傾向が見られた。ツキノワグマの空間分布に関係する環境要因の重要度は、季節ごとに違いがみられた。本成果は、2014年3月に開催された第61回日本生態学会にて研究成果の発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、3か年の研究計画であり、サブテーマが4つある。2013年度が最終年度となっている。2011年度採用開始時から2年間掛けて解析を行い、国内外の学会で発表してきた研究成果がある。本年度はすべてのサブテーマの成果が出揃い、いよいよ査読論文として成果を取りまとめていく段階に入った。申請者の研究成果が社会に認められ、権威のある環境情報科学センターから学術論文奨励賞の授与が決定した。3年間の日本学術振興会特別研究員の採用期間中に、申請者が分担執筆した著書が2冊、査読付き論文が6本ある。特に、3年目の2013年度は、著書が1冊、査読付き論文が5本採択あるいは出版されている。サブテーマの全てのテーマの論文が出版されたわけではないので、「当初の計画以上に進展している」とは評価せず、「おおむね順調に進展している」と評価した。
今年度が最終年度であるため、研究は概ね終了している。今後は本研究課題について新しい解析は行わず、今までの成果を査読付き論文として外部の雑誌に出版することに注力する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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