私は、平成24年度中に3本の主著論文を国際雑誌に発表し、1本を準備甲である。そのうち出版論文2本に関しては、これまでの報告書でまとめられているので、本報告書では、24年度中に中心的におこなった研究について報告する。 音速抑制法を用いた太陽対流層高解像度の数値計算 23年度に、自身で開発した「音速抑制法」を用いて非常に高解像度で現実の太陽に忠実な熱対流をシミュレートするための数値計算コードを開発し、現在のところ世界最高解像度の太陽熱対流計算に成功した。これまでの太陽全球殻熱対流計算では、アネラスティック近似を用いていたために、表面付近を取り扱えない・解像度をあげられないという問題点があったのだが、それらの問題点を解決可能な「音速抑制法」を取り入れた計算をおこなったためにこのような成果があげられたと考えている。また、これまで取り扱っていなかったので問題にならなかったのであるが、表面近くの領域は水素・ヘリウムの電離が解ける領域であり、その効果を正しく取り入れなければ熱対流を現実の太陽に合うようにシミュレートできない。そこで、全球殻計算用にあたらしく電離の効果を取り入れる方法を開発した。その結果、これまでの熱対流計算では100Mmほどの熱対流構造が卓越していたのであるが、本研究では10Mmほどの対流セルが実現できた。これは、表面で観測される「超粒状斑」にほぼ対応するものであり、世界ではじめて全球スケールの計算で、実際に観測可能なものを再現できた。また、物理的にも興味深い現象が発見されている。表面で生成されたしい小さいスケールの熱対流はある程度まで太陽内部に侵入し、内部でも小スケールの乱流を励起する事。下降流の内部には微細構造があり、その中で乱流的な場がダイナモ作用により強く小さな磁場を生成している事がわかった。この成果は、論文投稿の準備をしているところである。
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