平成24年度(採用1年目)に、自身で開発した「音速抑制法」を用いて非常に高解像度で現実の太陽に忠実な熱対流をシミュレートした。太陽内部角速度の未解決の問題として、「表面勾配層」があった。日震学の成果により、太陽の表面直下に回転角速度の大きい層があるということが明らかになっておりこの層のことを表面勾配層と呼んでいる。この層の物理機構は、我々の研究の前までは明らかになっていなかった。観測困難な太陽内部の現象なので、その解決は数値計算に頼らざるを得ないが、表面勾配層の数値計算による再現は困難と考えられていた。表面勾配層は、太陽の中で回転の影響をあまり受けない小空間スケール・短時間スケールの乱流が維持しているだろうとこれまでに予測されていた。しかし、太陽の中で小スケールの乱流を分解するには多量の解像度を必要とするので、コストの高い計算となるのである。私の開発した「音速抑制法」では、並列計算機を効率よく使えるためにこれまでに比べ飛躍的に解像度をあげる事が可能になった。この方法を用いて高解像度の太陽対流層計算をおこない世界で初めて、表面勾配層を数値計算によって再現した。また、詳細な解析によってその維持機構を明らかにした。その結果は以下のようであった。回転の影響を受けた乱流が角運動量を運び差動回転を作る。そのことによる平均的なコリオリ力が子午面還流を誘起する。この子午面還流の動径方向の勾配により乱流の性質が変化する。性質の変化した乱流によって運ばれた運動量が表面勾配層の力のバランスに働いているというものである。この成果については、The Astrophysical Journalに投稿した。
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