研究課題/領域番号 |
11J04571
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
筒井 晴香 立教大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 共同行為 / 慣習 / 共通知識 / 社会科学の哲学 / セックス/ジェンダー / 脳の性差 / 脳神経倫理学 / ナラティヴ |
研究概要 |
本研究の大目標は慣習的規範の解明である。慣習的規範とは、例えばマナーに関する決まりごとなど、単なる合目的性といった観点からはそれに従う必然性を説明しきれないような規範である。慣習的規範の持つこのような特徴は、我々はなぜ規範を持ち、規範に従うのかという重要な問いの根本に関わるものである。さらに本研究では、応用研究としてジェンダーの脳神経倫理をテーマとし、脳の性差に関する研究や言説の背後にあるジェンダー規範について考察する。 本年度の研究は以下のように進んだ。まず、基礎研究に当たる規範の研究においては、昨年度に引き続き、規範と共同体・共同性との結びつきに注目するという方針のもとで、共同行為に関する考察を推し進めた。具体的には、共同行為論における還元主義と非還元主義の対立を乗り越えるアイデアを含むものとしてA. S.ロスの議論に注目し、そこから、個々の共同行為でなくそれを支える行為者たちの相互関係のありように焦点を当てて行くという視座を取り出した。この成果は日本科学哲学会大45回大会において発表した。また、これは博士論文の中核的な論点を成すものとなる。 応用研究であるジェンダー研究においては、ナラティヴ・アプローチの導入により、脳の性差に関する一般向け言説やその社会的受容のありようを多角的に捉えることを試みた。この成果は東京大学でのシンポジウムにおいて発表した。さらに、日本特有の社会的状況の分析も含めた発表をウプサラ大学(スウェーデン)でのシンポジウムにおいて行った。また、ジェンダー・スタディーズ入門書の脳の性差に関するセクションを執筆した。これは当該分野の認知度向上に大きく貢献するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は共同行為論に関して博士論文の中核を為すテーマをまとめ、発表の機会を得た。また、ジェンダー研究に関してナラティヴ・アプローチという新しい視座を見出すとともに、学際的・国際的な議論の機会を持った。これらの点は慣習的規範の解明という本研究の目的に資するとともに、展望を広げるものである。よって本研究の進捗は順調なものと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
共同行為をテーマにした博士論文を完成させ、共同性と慣習的規範に関する考察へと発展させて、国内外の学会等での発表、論文投稿を行っていく。またジェンダーの脳神経倫理研究に関しては、分野横断的な場での議論・研究交流を継続的に行っていきたい。
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