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2011 年度 実績報告書

TGF-β阻害剤と嗅球グリア細胞遅延移植による脊髄再生メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 11J04608
研究機関首都大学東京

研究代表者

吉岡 望  首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)

キーワード神経再生 / コンドロイチン硫酸 / プロテオグリカン / 瘢痕組織 / グリア前駆細胞 / TGF-β / 線維芽細胞 / アストロサイト
研究概要

本年度は、損傷を受けた中枢神経系において軸索再生が困難な環境が構築されるメカニズムに焦点を当てた。マウス脳に損傷を施すと、損傷部には線維芽細胞とアストロサイトが集積することで、カサブタ様の瘢痕組織が形成された。瘢痕組織には、軸索伸長阻害因子として知られるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)が蓄積しており、これが軸索再生を阻害していると考えられた。そこで、線維芽細胞によるCSPG産生を促進するTGF-βに対する選択的阻害剤を損傷部に投与した。すると、線維芽細胞に由来するCSPGの発現が顕著に抑えられた。この時、神経軸索が損傷部を超えて再生した(Yoshioka et al.,J Neurosci Res,2011)。次に、アストロサイトがCSPGを産生するメカニズムを調べた。損傷を受けた脳では、グリア前駆細胞が増殖しており、これがアストロサイトに分化することで瘢痕組織を形成した。さらに、グリア前駆細胞は、大量のCSPGを産生しており、これが瘢痕組織に蓄積することを見出した(Yoshioka et al.,J Comp Neurol,2012)。以上の結果、神経再生が困難な理由として、瘢痕組織を構築する線維芽細胞とアストロサイトによって大量のCSPGが産生される事が示唆された。本年度は、TGF-β阻害剤による神経再生メカニズムの解明という研究目的を達成した。さらに、アストロサイトによる再生阻害環境の構築メカニズムの解明という新たな展開を見せた。来年度は、もう一つの研究課題である嗅球グリア細胞移植によって神経再生が起こりやすい環境が構築されるメカニズムについて解析する。さらに、新たな課題としてCSPGの再生阻害作用についても詳細な解析を実施する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の予定では、線維芽細胞による再生阻害環境の軽減を目的としたTGF-β阻害剤による神経再生メカニズムの解明を目的としていた。しかし当初の目標達成に加え、アストロサイトによる再生阻害環境の構築メカニズムを解明できた。これは、当初の計画以上の成果である。

今後の研究の推進方策

本年度は、脊髄損傷に対する治療薬としてのTGF-β阻害剤の有望性を示した上で、その作用メカニズムを明らかにした。今後は、もう一つの研究課題である嗅球グリア細胞移植による神経再生メカニズムを解明する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] The astrocytic lineage marker calmodulin-regulated spectrin-associated protein 1 (Camsap1) : phenotypic heterogeneity of newly born Camsapl-expressing cells in injured mouse brain2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshioka Nozomu, Asou Hiroaki, Hisanaga Shin-ichi, Kawano Hitoshi
    • 雑誌名

      J Comp Neurol

      巻: 520 ページ: 1301-1317

    • DOI

      10.1002/cne.22788

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Small molecule inhibitor of type I transforming growth factor-β receptor kinase a meliorates inhibitory milieu in injured brain and promotes regeneration of nigrostriatal dopaminergic axons2011

    • 著者名/発表者名
      Yoshioka Nozomu, Kimura-Kuroda Junko, Saito Tarou, Kawamura Koki, Hisanaga Shin-ichi, Kawano Hitoshi
    • 雑誌名

      J Neurosci Res

      巻: 89 ページ: 381-393

    • DOI

      10.1002/jnr.22552

    • 査読あり
  • [学会発表] 中枢神経系の創傷治癒と神経再生阻害に果たす瘢痕組織の役割について2012

    • 著者名/発表者名
      吉岡望
    • 学会等名
      グリアクラブ
    • 発表場所
      ヒルトンニセコ(北海道)
    • 年月日
      2012-02-09
  • [学会発表] 脳外傷後の神経再生阻害と組織修復に果たすグリア-線維性瘢痕の役割について2011

    • 著者名/発表者名
      吉岡望
    • 学会等名
      日本神経化学会
    • 発表場所
      瑠璃光(石川)
    • 年月日
      2011-09-27
  • [学会発表] 脳外傷後の組織修復と神経再生阻害に果たす瘢痕組織の役割について2011

    • 著者名/発表者名
      吉岡望
    • 学会等名
      日本神経科学会
    • 発表場所
      パシフィッコ横浜(神奈川)
    • 年月日
      2011-09-17
  • [学会発表] 中枢神経系における組織修復と神経再生阻害のメカニズムについて2011

    • 著者名/発表者名
      吉岡望
    • 学会等名
      神経組織の成長・再生・移植研究会
    • 発表場所
      東京医科歯科大学(東京都)
    • 年月日
      2011-06-25

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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