研究概要 |
small RNAはタンパク質をコードしない20-30塩基程度の小分子RNAであり、様々な生物種の遺伝子発現制御に重要な役割を担っている。代表的なsmall RNAであるsiRNAやmiRNAはRISCと呼ばれるエフェクター複合体を形成し、標的RNAの切断や翻訳抑制を行う。RISCの中心となる因子はArgonaute(Ago/miRNA経路ではAgo1)と呼ばれるタンパク質である。これまでに我々は、Hsc70/Hsp90シャペロンマシナリーがRISCへの二本鎖RNAの積み込みに必要であることを明らかにした。しかしながら、必要な全ての因子や、具体的な作用機序については未だ明らかになっていなかった。そこで本研究は、ショウジョウバエmiRNA経路におけるRISC積み込みに必要な全ての因子の同定と、Ago1-Hsc70/Hsp90シャペロンマシナリー複合体の形成過程の解析を目指した。 平成23年度は、既に得られていた候補因子(Hsc70-4,Hsp83,Hop,Droj2)のリコンビナントタンパク質を作成した。また、Hsc70-4のATP結合ドメイン変異体を作成し、RISC積み込みを定量的に評価できる実験系において、RISC積み込み活性が阻害されることを確認した。 現在は、miRNA経路と並ぶ主要なsmall RNAであるpiRNAの生合成メカニズムを解明すべく研究を行っている。piRNAはArgonauteファミリータンパク質であるPIWIと複合体を形成し、生殖系列細胞においてトランスポゾンの発現を抑制することで、次世代への正確な遺伝子情報の伝達を助けていると考えられている。しかし、piRNAの生合成経路は未知の部分が多く、早急な解明が求められる。
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