研究課題/領域番号 |
11J04636
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 真希 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | miRNA / piRNA / Argonaute / RISC / 生化学 |
研究概要 |
私は、一昨年度の実施目標であったmiRNA経路におけるRISC積み込み因子の探索と同定についての研究をまとめ、昨年度より、miRNA経路に並ぶメジャーな小分子RNAであるpiRNAの生合成メカニズムについて研究を行っている。piRNA(PIWI-interacting RNA)はPIWIタンパク質と複合体を形成し、生殖系列細胞においてトランスポゾンの発現を抑制していると考えられている。 昨年度までに我々は、GFPを含むトランスジーンと、カイコ卵巣由来の培養細胞であるBmN4を利用し、de novoに産生されたGFP由来piRNA(GFP-piRNA)によってGFPの発現が抑制される細胞株を確立した。それらの細胞株においては、GFPトランスジーン由来のアンチセンス転写産物(asGFP)が、内在性piRNAクラスタであるtorimochi由来の転写産物と融合転写産物を形成し、そのことがde novo piRNA産生の引き金となっていることが示唆された。 そこで昨年度は引き続き、de novo piRNAの産生に必要な条件を解明することを目指し、torimochi近傍領域の詳細な解析を行った。GFPを恒常的に発現しているBmN4細胞でtorimochi-asGFPの融合転写物を一過的に発現させたところ、GFP-piRNAの産生は認められなかった。このことから、de novo piRNAの産生には外来の配列とpiRNAクラスタ由来転写産物とが融合したRNAが存在するだけでは不十分であり、外来配列が内在性piRNAクラスタ領域に挿入される必要があることが示唆された。さらに、torimochi近傍のゲノム配列の解析により、カイコ成体から採取した卵巣とBmN4とでは、torimochi近傍でゲノムのリアレンジメントが起こっていることが明らかとなった。興味深いことに、カイコ成体由来の卵巣においてはtorimochiがpiRNAクラスタを形成しておらず、ゲノムリアレンジメントによりこの領域がpiRNA産生能を獲得した可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究方策に則りカイコのpiRNA経路について研究を進め、一昨年度に我々が発見したpiRNAクラスターであるtorimochiの性状について一定のデータを得ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、torimochiがpiRNA産生能を獲得した理由について、より詳細な解析を行う。近年に相次いで報告されているDSB(DNA double strand break)やmRNAのスプライシングとsmall RNA経路との関連などに着目し、denovoのpiRNAが産生されるようになる条件について、in vivoでの検討を行う。
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