最近我々は、GFPを含むトランスジーンと、カイコ卵巣由来の培養細胞であるBmN4を利用し、GFPの発現がde novoに産生されたGFP由来piRNAによって抑制される細胞株を確立した。それらの細胞株においては、PIWIタンパク質による切断を介したGFP-piRNAの増幅が認められた。さらに、GFPトランスジーンが、内在性piRNAクラスタであるTorimochiの内部に挿入されていることが明らかとなり、そのことがde novo piRNA産生の引き金となっていると示唆された。 そこで、de novo piRNAの産生に必要な条件をより詳細に解明することを目指し、Torimochi近傍のゲノム配列の解析を行った。その結果、カイコ成体から採取した卵巣とBmN4とでは、Torimochi近傍でゲノムの再編成が起こっていることが明らかとなった。興味深いことに、カイコ成体由来の卵巣においてはTorimochiがpiRNAクラスタを形成しておらず、ゲノムの再編成によりこの領域がpiRNA産生能を獲得した可能性が示唆された。また、トランスポゾンに限らずGFP等の一般的な配列をBmN4細胞に導入し、数ヶ月維持した場合に、外来配列に由来するde novo piRNAが産生されるという非常に興味深い現象を発見した。この現象と、piRNA産生メカニズムとの結びつきをより詳細に解析することで、piRNAの作用機序や生体内での役割に関する新たな知見が得られることが期待される。
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