研究課題/領域番号 |
11J04681
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒川 淳 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | AIM / インスリン抵抗性 / マクロファージ / 肥満 / 2型糖尿病 / メタボリックシンドローム |
研究概要 |
今年度は、「AIMによる脂肪組織へのマクロファージ浸潤を誘導するメカニズムの解明」を主な研究課題とした。まず、高脂肪食(HFD)を付加したAIM^<+/+>マウスにおける血中AIM濃度の変動を解析したところ、肥満の亢進に伴い血中AIM濃度が増加することを見出した。また、HFD負荷AIM^<-/->マウスでは肥満の亢進に伴う脂肪組織へのマクロファージ浸潤が抑制されることを明らかとした。これらの結果から、AIMは肥満に伴う脂肪組織へのマクロファージ浸潤に深く関与する可能性が示唆された。次に、AIMによるマクロファージ走化能について検討を行った。その結果、AIM自身はマクロファージ走化能を持たないこと、AIMを作用させた脂肪細胞の培地には高いマクロファージ走化能が認められ、この培地中にはMCP-1を含むケモカインが多量に含まれていることが明らかとなった。また、これを支える分子メカニズムは、AIMにより脂肪細胞にLipolysisが誘導された結果、脂肪細胞から飽和脂肪酸が放出され、脂肪細胞自身に発現するTLR4を刺激し、ケモカインの産生を促すためであることを明らかとした。さらに、HFD負荷AIM^<+/+>およびAIM^<-/->マウスにおける慢性炎症を評価した結果、AIM^<+/+>マウスと比較してAIM-/-マウスでは脂肪組織局所的ならびに全身性の炎症が軽減されていることが明らかとなった。また、これらの個体におけるインスリンシグナル伝達経路の生化学的解析ならびに耐糖能試験の結果から、AIM^<-/->マウスでは肥満の亢進に伴い惹起されるインスリン抵抗性が軽減されており、肥満し易いにも関わらず正常なインスリン感受性が維持されることが示唆された。これら結果から、AIMにより脂肪細胞に誘導されるLipolysisが肥満の亢進に伴う脂肪組織へのマクロファージの浸潤を誘導するトリガーとなる得ることが示唆された。 本研究で得られたこれらの知見は、メタボリックシンドロームの分子病態を理解するための学術的価値だけではなくAIMを標的としたメタボリックシンドロームの新規予防法ならびに治療法を開発する上でも重要な役割を担うものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は「AIMによる脂肪組織へのマクロファージ浸潤を誘導するメカニズムの解明」を目的に研究を展開し、AIMにより脂肪細胞に誘導されるLipolysisが脂肪組織へのマクロファージ浸潤を誘導するトリガーとなるうる可能性を示した。研究課題に対して一定の解答を与えるに至っており研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究結果から、AIMとメタボリックシンドロームの関係の一端が明らかとなった。今後、AIMを標的としたメタボリックシンドロームの新規予防法、診断法、治療法の開発に向けて測定系の開発やAIM阻害剤の開発に着手する予定である。
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