研究概要 |
NK細胞は抗腫瘍効果を担う免疫細胞である.ウイルスゲノムを模したpoly I:CはNK細胞を主体とする強い抗腫瘍効果を誘導する.この時,樹状細胞(DC)とNK細胞の細胞接着依存的な機構が必須である.本研究は樹状細胞のpoly I:C受容体からのシグナル伝達に必須なアダプター分子であるTICAM-1およびIPS-1に着目し,poly I:Cの認識からNK細胞の活性化へと至る分子基盤の全貌を明らかにすることを目的とする.加えて,前著を背景として同定されたNK活性化因子の1つであるINAMの生理的意義を明らかにする目的でその欠損マウスおよび抗体を作成し,解析を行なう. 《今年度の実施計画と進捗状況》 ●INAM欠損マウスの作成 INAM(Fam26F)欠損ES細胞株を購入し,ICRマウス胚に導入後,野生型およびCreマウスと交配することでINAM欠損マウスを作成した. ●抗INAMポリクローナル抗体を用いた結合分子の探索と該当分子の質量分析解析 ●抗INAMポリクローナル抗体を用いた免疫シナプス形成機構の解析 上記め研究を遂行するため,INAMを遺伝子導入したウサギRK13細胞を抗原とし,抗INAMポリクローナル抗体を作成した. ●TICAM-1とIPS-1欠損マウス由来樹状細胞を用いたマイクロアレイ解析によるTICAM-1およびIPS-1依存的遺伝子群のカタログ化 ●NK活性化因子候補のスクリーニング TICAM-1およびIPS-1欠損マウス由来樹状細胞と野生型由来樹状細胞をpoly I:C刺激し,ジーンチップ解析をおこなうことで,網羅的にTICAM-1,IPS-1およびそれらにより発現誘導されるI型インターフェロン依存的遺伝子群を同定し,カタログ化した.現在,膜分子に着目し,NK活性化候補遺伝子をスクリーニングしている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね,実施計画に沿った研究成果が得られている.抗INIW抗体の作成において,当初ハムスターを用いたモノクローナル抗体の作成を計画していたが,その樹立には至らなかった.そこで,ウサギを用いた抗INAMポリクローナル抗体作成に変更し,上記研究目標を達成した.
|
今後の研究の推進方策 |
INAMの生理的意義を明らかにする目的でその遺伝子欠損マウスおよび抗INAM抗体を作製した.今後,in vitroおよびin vivoでの解析を通して,上記目的を達成する.また,ジーンチップ解析から,NK活性化を担い得る候補遺伝子をスクリーニングしている.今後,これらの遺伝子を対象とした機能解析を行なう予定である.
|