研究概要 |
NK細胞は抗腫瘍効果を担う免疫細胞である.ウイルスゲノムを模したpoly I:CはNK細胞を主体とする強い抗腫瘍効果を誘導する.この時,樹状細胞(DC)とNK細胞の細胞接着依存的な機構が必須である。本研究は樹状細胞のpoly I:C受容体からのシグナル伝達に必須なアダプター分子であるTICAM-1およびIPS-1に着目し,poly I:Cの認識からNK細胞の活性化へと至る分子基盤の全貌を明らかにすることを目的とする.加えて,前著を背景として同定されたNK活性化因子の1つであるINAMの生理的意義を明らかにする目的でその欠損マウスの解析をおこなう. 《今年度の実施計画と進捗状況》 ●INAM欠損マウスの解析 前年度,INAM欠損マウスの作成をおこなった.本年度はINAM欠損マウスを用い,生体内におけるNK細胞活性化能を評価した.その結果,INAM欠損マウスでは野生型マウスに比べ,部分的にサイトカイン産生および細胞傷害活性の低下が認められた.加えて,INAM欠損マウスおよび野生型マウス由来のNK細胞と脾臓DCの共培養実験から,NK細胞とDCで発現するINAMがサイトカイン産生に重要な役割を担うことを明らかにした. ●抗INAM抗体を用いた結合分子の探索と該当分子の質量分析解析 ●抗INAM抗体を用いた免疫シナプス形成機構の解析 上記の研究を遂行するため,INAM欠損マウスにINAM過剰発現B16D8細胞を免疫して,モノクローナル抗体の樹立を企画している. ●NK活性化因子候補のスクリーニングおよびそれらの機能解析 前年度,骨髄由来DCを用いたTICAM-1,IPS-1およびI型インターフェロン誘導性遺伝子群をカタログ化した.その結果,(1)新規ペア型レセプター群,および(2)CD8a陽性DCのみに発現が認められるレセプターを同定した.現在,これらの機能解析を遂行している.
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今後の研究の推進方策 |
INAM欠損マウスの解析では,各種病態モデルを検索し,INAMの生理的意義を検討する.さらに,INAMを介したNK細胞の活性化機構を細胞・分子レベルで詳細に検討する.また,現在までにINAM以外のNK活性化因子候補のスクリーニングが終了している.これら候補遺伝子の機能解析も順次進める予定である.
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