研究概要 |
環境汚染物質の胎児期および乳児期の曝露は出生児の体重あるいは発達に影響することが報告される。本課題では、その影響に関して子宮内発育遅延で関連が指摘されるIGFに着目し、環境汚染物質との関連を検討することを目的としている. 東北コホート調査(Tohoku Study of Child Development, TSCD)の対象者のうち、曝露指標となる臍帯血中総水銀、ヒ素、カドミウム、セレン、スズおよび鉛ならびにポリ塩素化ビフェニル(PCB)濃度データが揃い、かつ母体血の採取時期および出産時年齢等を考慮した約100検体を分析対象とした。IGFの分析はELISA法により行い、統計解析はJMPおよびSPSSによった。 その結果、母体血血漿のIGF-1の平均(25th-75th percentile)は119 (96-139)ng/mLであった(N=95)。臍帯血血漿IGF-1の平均(25th-75th percentile)は、53 (46-58)ng/mLであった(N=89)。母体血および臍帯血中IGF-1は母体血の方が有意にその濃度が高かった(P<0.05)。IGF分析の精度管理については、ELISAのプレート内およびプレート間で同一の試料(2検体)を繰り返し測ることで行った。検体1のプレート内の平均±標準偏差は139±7.5 (CV値5%, n=6)、プレート間の平均±標準偏差は138±10 (CV値7%, n=4)であった。検体2のプレート内の平均±標準偏差は188±6.3 (CV値3%, n=6)、プレート間の平均±標準偏差は215±8 (CV値4%, n=4)であった。プレート内およびプレート間のCV値はプロトコルに記載されたものより小さく、分析精度に問題はないと考えられる。また測定したIGF-1と出生時体重との間には有意な正の相関がみられた。
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