研究課題/領域番号 |
11J04749
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
若松 大樹 日本大学, 文理学部・人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | アレヴィー / クルド / 預言者一族 / グローバル化 / グローカル化 / オジャク |
研究概要 |
本年度は、2本の論文発表を行い、これまでの研究成果に加筆・修正を加えることによって、最大の成果である博士論文『クルド系アレヴィーの人々の民族誌:宗教と社会範躊に関する人類学的研究』(2011年3月:上智大学に提出)をまとめることができた。博士論文では、これまでの先行研究において包括的な研究がなされてこなかった、ザザ語やクルマンジ語などのクルド系諸語を母語とする、いわゆるクルド系アレヴィーの人々の間で崇敬される聖者のオジャクOcakと呼ばれる共同体の構造やネットワークに関して、丹念なフィールドワークを行った結果として、オジャクが、人々の間で儀礼実行集団的側面を持つ帰属概念を示す言葉であると同時に、イヌラームの預言者ムハンマドの娘婿である4代カリフ・アリーに連なる「聖者の系譜」を意味する帰属概念を示す言葉としても、人々の間で認識されていることを明らかにした。本年度は、この伝統的なオジャクと、グローバルあるいはグローカルな世界との間に、どのような相互作用が生じているかを、儀礼の観察や聞き取り調査などの丹念なフィールド調査を行った。2011年5月には、トルコ共和国国立トゥンジェリ大学にあるアレヴィーズム研究所に研究員としての受け入れがかない、2011年5月から同12月まで、トルコ国内各地で開催された聖者追悼祭における参与観察や、東部アナトリア地域の村落地域における聞き取り調査を行った。その結果、一般信徒のレベルで広く実践されている預言者一族や聖者崇敬とは別の信仰体系でありながらも、それらと密接な関係を取り持って実践されているヒドル(コーラン洞窟章に「緑の男」として登場する、神の真理を知る存在)崇敬も観察され、新たな着想を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
伝統的なオジャクと呼ばれる帰属概念が、移民や都市化といった大きく急速な社会変化を経験することによって、どのように操作され変容してきているかという変化に関して、新たな着想を得ることができたと同時に、学術論文2本の刊行に加え、最大の研究成果である博士論文を執筆できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施した調査・研究によって、伝統的なオジャク概念が預言者一族・聖者崇敬の様相をグローバル化・グローカル化といった社会変化の中でどのように操作され、変容してきているのかに関して、一般信徒の間で広く崇敬されているヒドルの崇敬とその発展に関する新たな着想を得ることができた。今後は、このヒドルの崇敬に関して舟念なフィールド調査を行い、手始めとして平成24年度中に論文や口頭発表を行う。
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