研究課題/領域番号 |
11J04749
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
若松 大樹 日本大学, 文理学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | クルド系アレヴィー / トルコ共和国 / 伝統的知識人 / 帰属概念 / 聖者崇敬 / 文化人類学 / 民族誌記述 |
研究概要 |
本年度の研究の目的は、前年度に引き続き、トルコ共和国東部アナトリアのクルド系アレヴィーの人々の間に流通するオジャクOcakと呼ばれる伝統的社会範疇が、フィールドの人々の間でどのように操作され、どのような変容を遂げているのかを明らかにすることであった。 具体的には、トルコ共和国国立トゥンジェリ大学に研究員として受入れてもらい、平成24年4月1日から同年7月1日までの期間、主にデルスィム地域(ムシュ県ヴァルト郡を中心に、トゥンジェリ県、ビンギョル県の郡部・村落部地域)において、ズィヤーレトZiyaretと呼ばれる聖者の廟へ訪問し、そこで実践される聖木・聖跡崇敬、聖者崇敬の実態を、儀礼の参与観察や参詣する人々への聞き取り調査によって調査を行った。 引き続き、聖者追悼祭が多く行われる平成24年8月13日から同年12月31日までの間、デルスィム地域における聖者廟の全体像と、聖者崇敬の実態調査を行うため、デルスィム地域を引き続き調査対象としながら、フィールド調査を行った。その結果、アレヴィーの人々がオジャクへの帰属を表明する際に、参照されるある種の「伝統Adet」が流通していて、その伝統が構築される過程において、従来村で預言者一族の聖者として崇敬される、デデDedeと称される伝統的知識人の言説が影響していることはよく知られていたが、そこに現地出身で人文社会系の大学を卒業した、現地エリートばかりでなく、外部の研究者の言説が介在していることを、この調査によって発見できた。 このことは、一つの民族誌として人類学者が記述する際に、伝統的知識人、現地エリート、そして外部の研究者の言説まで含めた形で、伝統的社会範疇がフィールドにおいて流通しているということに十分な注意が必要であるという点において、今年度の研究活動の実施には重要な意味を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
聖者崇敬のあり方や、預言者一族の系譜に関するフィールド調査を通して、伝統的社会範疇であるオジャク概念がどのように操作されているのかという問題について探求してきたが、そこに従来の伝統的知識人に加えて、外部の研究者までもがかかわっている事実を明らかにできたことは、本研究が順調に進展していることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成23年度および平成24年度に継続的に行ったフィールド調査のデータを分析しながら、成果発表・刊行を中心に行っていく。具体的には、引き続き、聖者追悼祭における聖者廟を中心とした巡礼地の訪問を中心に、短期のフィールド調査を継続して、これまでのデータを補完するとともに、アレヴィー研究の専門家たちと連絡を取り合い、トルコ語または英語などで、成果を公表する予定である。
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