研究課題/領域番号 |
11J04771
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
三上 恵里 早稲田大学, スポーツ科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | トップアスリート / 陸上競技 / 瞬発系・パワー系 / 100m走 / ACTN3遺伝子多型 |
研究概要 |
本研究の目的は、日本人トップアスリートの瞬発系・パワー系運動能力を規定する遺伝子多型を明らかにすることであった。対象は、全国大会への出場経験を有する日本人エリート陸上競技選手298名、および競技スポーツ経験のない健康な日本人649名とした。競技者群のうち126名が、オリンピックや世界選手権などの国際大会出場経験者であった。平成23年度は、文献検索により瞬発系・パワー系運動能力と関連することが予想される候補遺伝子多型43多型(27遺伝子)を抽出し、その中で、日本人におけるマイナーアリル頻度が5%以上である19多型についてTaqMan Genotyping Assay法を用いて解析を行った。現在も解析を継続中である。 これまでに得られた結果から、α-アクチニン3(ACTN3)遺伝子に存在するR577X多型が、日本人エリート陸上競技選手の瞬発系・パワー系競技特性と関連していることが明らかとなった。瞬発系・パワー系選手群(短距離走、跳躍、投てき)においてRアリルの頻度がコントロール群と比較し有意に高く、この傾向は、特に短距離走選手において強く認められた。さらに、短距離走選手の自己ベストタイムとACTN3 R577X遺伝子多型との関連性を検討すると、ACTN3 Rアリルを有する選手は100m走の自己ベストタイムが有意に速いことが明らかとなり、ロンドンオリンピックのB標準記録(10秒24)を上回る記録を有していた人は、全員がRRもしくはRX型であった。しかしながら、400m走の自己ベストタイムとACTN3 R577X多型には、このような関連性は認められなかった。これらの結果は、ACTN3 R577X多型が瞬発系・パワー系競技の中でも特に100m走のパフォーマンスに影響を及ぼしていることを示唆している。このように、各種目と遺伝子多型の関連性について詳細なデータを蓄積していくことで、将来的には、遺伝情報を元にした種目選択やタレント発掘などへ応用できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、目標としていたトップアスリート300名のリクルートを達成することができ、文献検索より抽出した瞬発系・パワー系運動能力と関連することが予想される候補遺伝子多型19種類の解析も終了した。したがって、おおむね当初の計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も計画通りに研究を進める。日本人の瞬発系・パワー系運動能力の発揮に最も適した遺伝子多型の組み合わせを明らかにし、それらの多型が世界のトップスプリンターにおいても影響を及ぼしているのか否かを明らかにする。その後、瞬発系・パワー系運動能力の発揮に重要な遺伝子多型の機能解析を行う。
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