研究課題/領域番号 |
11J04790
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
伊藤 尚基 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 筋肥大 / 筋萎縮 / 一酸化窒素 / 活性酸素 / nNOS / NOX / peroxynitrite |
研究概要 |
骨格筋筋肥大におけるnNOSおよび産生されたNOの機能を明らかにする為、本年度はメカニカルストレス直後に活性化されたnNOSのターゲット分子・シグナル、およびメカニカルストレスによるnNOSの活性化機構を解析することを目的とした。 その結果、メカニカルストレス直後に活性化されたnNOSによって産生されたNOは、活性酸素産生酵素であるNADPH oxidase 4(NOX4)によって産生された活性酸素と反応することにより、peroxynitriteとして働くことがわかった。これまでの研究結果から、nNOS欠損型マウスでは、過負荷後に起こるmTORの活性化が起こらないことが明らかになっているが、peroxynitrite消去剤投与群でも同様に、過負荷後のmTORの活性化が認められなかった。これらの結果から、過負荷後に産生されるperoxynitriteが、筋肥大を促進する分子であることが分かった。 NOと活性酸素の反応物であるperoxynitriteは、その酸化力の強さから、一般的には細胞毒性を引き起こすと認識されている。しかしながら、近年、生理的濃度のperoxynitriteは血管新生・血管拡張、記憶等を制御することが報告されている。本研究の結果から、peroxynitriteの新たな生理的機能が明らかになる可能性がある。また、筋肥大においてperoxynitriteが関与していることが分かったことから、今後、peroxynitriteの制御を視点とした、新たな筋肥大促進薬の開発に繋がる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NOと挙動を共にする分子を同定したことは、下流のシグナル経路を活性化するメカニズムを明らかにする上で非常に重要であると思われる。しかし、標的分子が増えたことにより、当初の予定よりも解析すべき内容が増加したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
筋肥大を促進する上でNO/peroxynitriteが重要であることがわかったことから、今後はNO/peroxynitriteによって活性化される分子を同定し、その分子の筋肥大における機能を探索する。NOはS-ニトロシル化を介して、peroxynitriteはS-グルタチオン化を介して、標的タンパク質を翻訳後修飾することがわかっており、今後は筋肥大前後での両翻訳後修飾の変化を解析する。
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