骨格筋筋肥大におけるnNOSおよび産生されたNO/peroxynitriteの機能を明らかにする為、本年度はNO/peroxynitriteによるmTOR活性化のメカニズムを解析することを目的とした。 その結果、メカニカルストレス直後に活性化されたnNOSによって産生されたNOおよび活性酸素産生酵素であるNADPH oxidase 4(NOX4)によって産生された活性酸素と反応することにより産生されたperoxynitriteは、細胞内カルシウム濃度を制御することでmTORを活性化し、筋肥大を促進することがわかった。また細胞内カルシウム濃度を薬理学的に上昇させるだけでmTORは活性化し、また過負荷依存的なmTORの活性化は細胞内カルシウムキレートBAPTA-蝋により抑制されたことから、負荷依存的なmTORの活性化は細胞内カルシウム濃度依存的に起こることが分かった。 NO/peroxynitriteのターゲットとなるカルシウムチャネルを探索した結果、NO/peroxynitriteは陽イオンチャネルTRPV1を活性化することでmTORを活性化し、筋肥大を促進することが分かった。興味深いことに、TRPV1のアゴニストであり、トウガラシの辛み成分であるcapsaicinを投与するだけで、mTORは活性化し、筋肥大が促進、筋萎縮が軽減された。 本研究は負荷依存的な筋肥大においてNO/peroxynitrite、細胞内カルシウム濃度およびTRPV1が重要であることを示し、またTRPV1が筋萎縮治療において新たなターゲットとなる可能性を提示した。
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