研究課題/領域番号 |
11J04831
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野中 太一郎 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 皮膚癌 / 頭頸部癌 / モデル動物 |
研究概要 |
AIDは生理的にBリンパ球に強く発現するが、他の細胞における発現は詳細に検討されていなかった。そこで、扁平上皮に内在性AIDの発現が認められるかどうか、ヒトのSquamous Cell Carcinoma (SCC)細胞株およびヒト初代培養ケラチノサイトを用いて検討を行った。その結果、AIDはSCC細胞株およびヒト初代培養ケラチノサイトにおいても発現を確認する事ができた。また同時に、効率よくAIDを発現誘導できるサイトカインや外来性刺激因子の検索を行ったところ、様々な炎症性サイトカイン等の刺激によってAIDの発現が誘導される事が判明した。この事から、ヒト扁平上皮細胞において、AIDは炎症に伴って刺激依存的に発現が上昇する事が示唆された。また、AIDを強制発現させたTリンパ球や繊維芽細胞において遺伝子変異を引き起こす事は知られていたが、扁平上皮細胞においてもAIDによって遺伝子突然変異が導入されるかどうかを検討した。不死化したヒト表皮角化細胞にAID遺伝子をレトロウイルスにて導入し、既知の癌遺伝子や癌抑制遺伝子に突然変異が誘導されるかどうか検討した。その結果、AID非導入の対照細胞と比較して、AIDを強制発現させた細胞は有意にp53遺伝子に突然変異が導入される事が判明した。p53遺伝子はヒトの皮膚癌や扁平上皮癌において高い頻度で変異が報告されており、AIDがヒトにおける皮膚・頭頸部癌の発症にも関与し得る事を支持する結果となった。また、ヒト臨床検体を用いて、AIDの発現が認められるかどうかを免疫染色にて検討した。その結果、多くの臨床検体においてAIDの染色性を認め、AIDがヒトの皮膚癌や頭頸部癌の発症に関与し得る事を支持する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度に引き続き、本年度も研究計画に従って着実に研究を遂行した。本年度は特に、AIDがヒトの扁平上皮癌に関与するかどうかを重点に解析を行い、重要な結果を得た。これらの結果を国際学会にて発表を行い、積極的に研究活動を展開した。また、複数の研究助成を受賞する等、本研究プロジェクトに対して国内外より一定の評価を得た。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討により、AIDは皮膚・頭頸部癌の促進因子である事が判明した。今後は、いかに皮膚・頭頸部癌を抑制するかに焦点を当て、免疫監視による皮膚・頭頸部癌の抑制機構について検討していく。
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