研究課題/領域番号 |
11J04859
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
倉島 洋介 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | マスト細胞 / 内因性制御リガンド / 細胞外核酸 / 皮膚 / 炎症性疾患 / P2X7受容体 |
研究概要 |
本研究では、P2X7受容体の発現機構の解明を軸に、P2X7受容体の発現を抑制する皮膚組織中の内因性制御リガンドとそのセンサー(受容体)の同定と、核酸成分受容体群(TLR7、TLR9、P2X7受容体)の複合的な免疫学的解析を行うことで、炎症性腸疾患や関節炎などの炎症性疾患での細胞外核酸の働きと新規治療法の確立を目指す。 初年度においては、皮膚に存在する内因性制御リガンド・センサーの探索と、マスト細胞におけるP2X7受容体の発現・機能制御分子の探索を目指した。実施状況を下記に示す。 1.皮膚における免疫抑制因子についての検討をビタミンD3ならびにプロスタグランジンに着目し、アゴニストならびにアンタゴニストを用いた解析を行った。これらの因子によるP2X7受容体の発現制御について解析したところ、ビタミンD3ならびにプロスタグランジンは目的とする内因性リガンドではないことが明らかとなった。 2.次に内因性リガンド産生細胞の探索を行った。皮膚においては、皮膚γδT細胞、真皮樹状細胞、ランゲルハンス細胞などの特殊な免疫細胞や、皮膚線維芽細胞をはじめとした非免疫細胞が存在する。そこでこれら細胞群の関与について、皮膚γδT細胞を欠損するTCRγ鎖欠損マウス、真皮樹状細胞ならびにランゲルハンス細胞を欠損するCD11c-DTR tgマウス、ランゲルハンス細胞の欠損マウスであるId2欠損マウスについて検討した。その結果、これらのマウスにおいてP2X7受容体は野生型マウスと同等の発現レベルであったことから、他の細胞がリガンド産生細胞である可能性が示された。そこで、生体から皮膚線維芽細胞を分取し細胞シートの作製を行い、皮膚線維芽細胞の培養上清およびマスト細胞との共培養によりP2X7受容体の発現を解析した結果、皮膚線維芽細胞との共培養によりP2X7受容体の発現が抑制されることが明らかとなった。このことから皮膚線維芽細胞が内因性リガンドの産生細胞であることが明らかとなった。 3.上記の実験結果より、内因性制御リガンドは皮膚線維芽細胞が産生していることが示された。しかしながら皮膚線維芽細胞の細胞株であるNIH3T3との共培養、ならびに腸管間質系細胞との共培養においてはP2X7受容体の発現レベルに変化が見られなかったことから、生体由来の皮膚線維芽細胞が特異的に内因性リガンドを産生している可能性が示されたことから、生体由来の皮膚線維芽細胞、NIH3T3、腸管間質系細胞の三者間の遺伝子プロファイリングを行うことで、内因性リガンドの同定を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、in vivo、in vitroのスクリーニングにより、内因性リガンドの産生細胞の探索を目的とした取り組みを行った。その結果、免疫細胞ではなく、皮膚に存在する線維芽細胞が内因性リガンドの産生細胞であるということが明らかとなった。本年度の目標は達成され、現在は遺伝子解析を行い、内因性リガンドの同定に向けた取り組みを行っている。内因性リガンドが同定されることで、炎症疾患の発症機構のみならず、新たな治療法の確立の可能性も考えられ、今後の更なる発展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の実験結果より、内因性制御リガンドは皮膚線維芽細胞が産生していることが示された。しかしながら皮膚線維芽細胞の細胞株であるNIH3T3との共培養、ならびに腸管間質系細胞との共培養においてはP2X7受容体の発現レベルに変化が見られなかったこと。このこと結果に基づき、生体由来の皮膚線維芽細胞が特異的に内因性リガンドを産生している可能性が示された。今後の検討として、生体由来の皮膚線維芽細胞、NIH3T3、腸管間質系細胞の三者間の遺伝子プロファイリングを行うことで、内因性リガンドの同定を目指している。
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