研究課題
本研究課題では、P2X7受容体の発現機構の解明を目的とし、皮膚に存在する内因性制御リガンド・センサー(受容体)の同定と、マスト細胞におけるP2X7受容体の発現・機能制御分子について解析を行った。まず、研究初年度~次年度においては、マスト細胞上のP2X7受容体の発現を抑制する機能が初代培養皮膚線維芽細胞に存在していることを見出した。さらに、腸管間質細胞など他の組織に存在する間質細胞と比較するために遺伝子プロファイリングを行った結果、皮膚線維芽細胞がレチノイド分解酵素を有意に高く発現していることが明らかとなった。つまり、皮膚線維芽細胞のレチノイド分解酵素がP2X7受容体の発現および機能制御に深く関与していることを見出した。最終年度においては、レチノイド分解酵素によるP2X7受容体の発現抑制機序の破綻が、マウスにおいて皮膚炎を導くことが明らかにした。これは、高濃度のビタミンA摂取によるレチノイド過剰症ならびにレチノイン酸療法の副作用である皮膚炎症のメカニズムの一つとして考えられ、炎症疾患の発症機構のみならず、レチノイン酸療法の合併症に対する予防法の可能性として示される。本研究により成果は、マスト細胞の組織特有の機能制御機構を初めて明らかとしたもので、今後、組織特異的な疾患の発症機序の解明および慢性炎症性疾患の新たな治療法確立につながると期待される。研究成果の一部については、国内および国際学会で発表をしており、主な内容はImmunity誌・201440 (4) : 530-541に発表している。
1: 当初の計画以上に進展している
3年弱の研究期間で論文発表に至るまで研究を遂行できた。本成果はマスト細胞の組織特有の機能制御機構を新たに見出したものであり、組織特異的な疾患の発症機序の解明および治療法確立の基盤となる可能性を秘めた点においては、達成度が高いものであると考えられる。
間質細胞との相互作用による免疫細胞の組織特異性の獲得機序の更なる解析から得られる成果が、慢性炎症に対する効果的な治療法の開発につながることを期待している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (3件)
Immunity
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http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/research/papers/cyp26bl.php
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_260411_j.html
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140411/