研究課題/領域番号 |
11J04916
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
稲葉 剛 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | フランス文学 / シュルレアリスム / アントナン・アルトー / クレオール文学 / 文学とイメージ / テクストにおける色彩表現 / 作家と画家 / 前衛芸術 |
研究概要 |
前年度のメキシコ調査旅行で得られた成果をさらに充実させるべく、本年度は同じく中米圏内にあるフランス海外県マルチニック島へと赴いた。本研究の対象であるフランスの詩人アントナン・アルトーは、この島において提唱され今日では広く知られるようになったクレオール文学においても重要な位置を占めており、大学図書館をはじめとした諸機関において貴重な資料を得ることができた。一例をあげるならば、この文学運動の担い手であったエドゥアール・グリッサンがその著作において、来たるべき詩的言語を創造した先駆者としてアルトーの名を繰り返しあげていることを確認できたことは非常に有意義であった。 またマルチニック島では、アルトーと同時代を生きたシュルレアリスムの詩人であるエメ・セゼールの研究成果に触れる機会も多かったが、それは本研究を大いに発展させることになった。周知のように、セゼールもまたアルトーと同様に、言語表現における自己のアイデンティティの在り方を深く考察した詩人であるため、この二者の研究には多くの共通項を見つけることができたからである。とりわけ、セゼールと、熱帯地方の風景をモチーフにして創作活動を行った画家ウィフレード・ラムとの関係を扱った学位論文を複数閲覧できたことは、大きな意義を持つ。本研究はアルトーの作品における「色彩」の役割を明らかにすることであるが、セゼールがラムの絵画作品に触発された思考のうちには、アルトーにも勝るとも劣らぬ詩的表現における「色彩」の重要性をみとめる態度が見て取れるからである。' そして以上の研究調査旅行の成果は2013年3月、日本フランス語フランス文学会の2012年度関東支部大会における口頭発表に結実した。研究を公共の利益に還元できたことは喜ばしく思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に提出した計画書通りフランス海外県マルチニック島へと研究調査旅行に赴くことができた。さらにこの成果は、本年度中に学会において発表されたと同時に、現在作成中の博士論文のうちに発展的に受け継がれることになった。
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今後の研究の推進方策 |
特別研究員の最終年度となる今年度は、博士論文の完成を目指し、さらにその成果を国内外を問わず学会等の公共の場において発表することを目的とする。研究内容の変更は特にないが、現在海外研究委託制度を利用して在学しているリヨン第二大学(フランス)での指導教授が、昨年度体調を崩され、一時期休講が続いたことが気がかりである。指導を確実に受けるべく、教授との連絡を今まで以上に密にとることを考えている。
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