研究課題/領域番号 |
11J04918
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大野 光明 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 沖縄闘争 / 復帰 / 社会運動 / ベ平連 / 竹中労 / 平和運動 / 越境 / マイノリティ |
研究概要 |
本研究は、沖縄の日本「復帰」(1972年)をめぐる日本「本土」における社会運動や諸実践(いわゆる「沖縄闘争」)の考察を通じて、戦後日本の社会運動の「越境」の実相を明らかにすることを目的としている。 1年次である2011年度は2つの目標を設定していた。第1に、反戦・反基地運動において「沖縄問題」が認識される過程と運動の内容を明らかにすることである。この点については、ベトナム戦争に反対した市民運動である、「ベトナムに平和を!市民連合」(ベ平連)を事例とした調査をし、検討を行なった。その成果として、論文「『沖縄問題』の入り口で-ベ平連運動の嘉手納基地前抗議行動と渡航制限撤廃闘争を事例に」及びAsia-Pacific Peace Research Association、日本平和学会での学会報告がある。ベ平連は、ベトナム戦争と日本の市民の生活とのつながりを理解していく過程で、沖縄の日本「本土」からの分離、米軍による直接統治という事態を問題化していったことが明らかにされた。 第2に、1960年代末期に、沖縄側から提起された反復帰論への「本土」側の反応を明らかにすることであった。この点については、1960年代後半から1970年代にかけて、沖縄を取材し、多くのルポルタージュを発表し、また、アナキストとして運動を起こした竹中労を事例に検討を行なった。成果として社会思想史学会での学会報告がある。竹中が、反復帰論と共鳴しながら、沖縄及び「本土」の復帰運動を批判し、活動をしていたことが明らかになった。 調査・検討にあたっては、約20名への聞き取り調査を実施し、沖縄県、東京都、広島県でのフィールドワークや資料収集も行なった。 また、シンポジウムやセミナーなどのアウトリーチ活動を通じて、研究成果を積極的に発信し、国内外の研究機関、研究者、行政、市民団体、マスコミなどとの関係を構築し、深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定された研究計画に沿って調査・検討を行ない、学会発表、論文発表、アウトリーチ活動などの形で成果を生み出した。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度については、(1)大阪の沖縄出身者集住地区における「沖縄闘争」の実態、(2)在日・在沖米軍基地内の反戦兵士支援運動における、海外・沖縄・日本の運動の連携の実相、(3)「沖縄闘争」をめぐる「旧左翼」と「新左翼」の取り組みの内容と違い、などを事例研究として継続して取り組む。そして、「沖縄闘争」において、国境、民族、人種、階級のボーダーラインが壊され、作り替えられていくメカニズムを明らかにすることで、既存の社会運動論に対して新たな理論・認識枠組みを提示したい。最終的には、2013年3月に博士論文にまとめ、提出する。研究計画に大きな変更はない。
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