研究課題/領域番号 |
11J04983
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
樋口 くみ子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 不登校 / 包摂/排除 / 接続 / 遊び・非行 / オルタナティブ / 教育支援センター |
研究概要 |
本研究の目的は公教育制度のオルタナティヴな存在に位置づけられ、公教育制度から排除された子ども達を包摂する処方箋として捉えられてきた学外施設を、特に適応指導教室の実態面から検証し、その排除構造を解き明かす中で今後の包摂可能性を模索していくことにある。この目的のもと、平成23年度は以下の3つの課題に取り組んだ。 1、適応指導教室の活動内容と排除プロセスの関係の解明:適応指導教室の受け入れ過程を考察した論文を執筆し、非行系の子どもの排除が問題化されないメカニズムについて明らかにした。また、今後の非行系の子どもの包摂に向けて活動内容を検討することの重要性も示唆された。 2、不登校・適応指導教室政策の動向把握:新聞記事なども含めた関連資料収集を行うなかで、旧文部省が民間施設に介入するきっかけとなったのは、91年に起きた民間施設での非行系の不登校生徒の死亡事件(風の子学園事件)にあることが判明した。更に、この死亡事件に対する旧文部省の責任のあり方が、非行の不登校の子ども達を適応指導教室へ受け入れる方向性ではなく、民間施設の「監視」へと向かった点が浮かび上がってきた。 3、NPO法人への運営委託動向把握:民間施設の「監視」という点から改めて適応指導教室関連事業資料を振り返り、NPO法人や民間施設への委託研究事業の動向を把握した。 これらに加え、課題1、3の更なる検討に向けて、660の適応指導教室(500教育委員会)を対象に質問紙調査を実施した(2012年3月郵送実施)。この際、一部の質問項目を研究代表者が5年前(2007年)に実施した質問紙調査とあわせ追跡調査とすることで、受け入れ動向推移や東日本大震災の影響など、適応指導教室研究・実践をはじめとし、不登校研究にとって貴重なデータとなったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災を受けて課題1「適応指導教室の活動内容と排除プロセスの関係の解明」に関する予備訪問調査を自粛し、代わりに質問紙調査を重点的に実施した。そこで新たな調査対象を確保できた点で、平成24年度実施予定の訪問調査に向けた計画に支障はない。課題2「不登校・適応指導教室政策の動向把握」は当初よりも多くの論点を設定することができたため、研究ノートではなく論文化に向けて作業内容を増やし、現在進行中で引き続き作業を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方策として、課題1「適応指導教室の活動内容と排除のプロセスの関係の解明」については、平成24年3月に実施した質問紙調査をもとに新たな訪問調査対象を選定し、計画通り平成24年度前半に訪問調査を行う。質問紙調査データは適応指導教室実践者・研究者の双方にとって貴重な資料であるため、フィードバック活動として適応指導教室現場への調査報告書作成に加え、紀要採録などのかたちで一般にも研究ノート形式で公開する。 課題2「不登校・適応指導教室政策の動向把握」と課題3「適応指導教室のNPO法人運営委託動向把握」については引き続き資料収集および関連する背景知識を深め、論文化を図る。
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