研究課題
広汎性発達障害(PDD)における自動的な共同注意の障害に関わる神経基盤を明らかにするための前段階として、定型発達者の神経活動の時空間構造を明らかにするためにMEG(脳磁図)およびERP(事象関連電位)を用いた脳活動計測実験を行った。MEG研究では、視線と矢印を手がかり刺激として呈示し、後続するターゲットの検出課題を課されている参加者の脳活動を計測した。その結果、逸れた視線と矢印に対しては、そうではない視線と矢印よりも大きな神経活動がみられ、先行研究で視線に対する活動が報告されていた上側頭溝、頭頂-前頭の注意ネットワークが逸れた視線と矢印の両方に共通して順に活動することが示された。今後、解析を洗練させた上で、PDD群との比較研究を行う予定である。ERP研究では、定型発達群において、閾下呈示された視線に対する脳活動と閾上呈示された視線に対する脳活動との比較を行った。PDD群ではマスク刺激を直後に呈示することによって意識的には見えなくなった視線の方向には注意シフトが生じないことが示されている。この現象は、PDD群における共同注意の機会が潜在的に少ないことを示唆しており、この障害の神経基盤を明らかにするためには定型発達群で閾下呈示された視線方向への注意シフトに関わる神経基盤を明らかにすることが必要である。本実験では、閾下呈示および閾上呈示された視線を呈示し、その後視線に一致した方向もしくは逆方向にターゲットを呈示した。参加者にはできるだけ早くターゲットを検出するという課題を課し、課題遂行中の閾下呈示および閾上呈示された視線とターゲットに対する脳活動とターゲットに対する反応時間を計測した。現在、実験参加者を増やしながら、並行してデータを解析中である。本研究についても定型発達者での結果を確定させたうえで、PDD群との比較研究を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
定型発達群での予備実験を終了し、次年度行う予定のPDD群との比較研究の基礎となる実験パラダイムを整備した。
研究計画の通り、行動指標で障害の確認された自動的な共同注意機能の神経基盤を同定するために、広汎性発達障害群と定型発達障害群の比較研究を行う。これらの結果と多様な心理指標との関係から、自動的な共同注意機能が広汎性発達障害の対人相互作用の障害にどのような役割を果たしているかを明らかにする。
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