研究課題/領域番号 |
11J05013
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡部 綾子 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | MT1-MMP / 癌細胞浸潤 / コンピュータシミュレーション |
研究概要 |
本研究「細胞外二重鎖RNAの細胞内輸送メカニズムの解明」は、細胞外からの二重鎖RNAの取り込み機構を含む、細胞内輸送メカニズムの未解明の機構を明らかにすることを目的としている。しかし、輸送経路や関係している分子など未知の部分を多く含んでいる。そこで、本研究を遂行するにあたり第一段階として、癌細胞浸潤におけるMembrane-type1MMP(MT1-MMP)の細胞膜挿入の細胞内輸送のモデルを作製することから始める。既に明らかとなっているように癌細胞の浸潤にはMTI-MMPが不可欠であり、細胞膜表面で不安定であるMT1-MMPは浸潤仮足への継続的な挿入が必須事項であると考えられる。しかし、その機構は未だ不明な部分が多い。 本年度は細胞内から浸潤仮足までどのような経路を通り、また、挿入されるまでの時間的な法則を明らかにするためのMT1-MMPの輸送のモデリングを完成させることを試みた。 その結果、我々は既知の実験データに基づき本研究室が開発したA-Cellソフトを用いてMT1-MMPの細胞内輸送モデルの構築に成功した。次に、MTI-MMP挿入に関して異なる3種類のシミュレーションを行った。 その結果、(1)Vesicle中の量を単独で変更させた場合、Vesicle中のMTI-MMP量を多くするとECM分解が早く進んだ。 (2)Vesicle間隔を単独で変更させた場合、間隔を狭めた場合挿入されるMT1-MMP量が多くなるため分解が早く進んだ。(3)MT1-MMPの平均挿入量が同一になるようにVesicle中のMTI-MMP量と間隔ともに変更させた場合、Vesicle間隔が長くMT1-MMP量を多くした場合、MT1-MMPの1回の挿入量が多くなるためECM分解が早く進んだ。以上のことよりECM分解を早く進ませ浸潤能力を上げる要素は、Vesicle輸送の間隔よりもVesicle中に含まれるMT1-MMP量を増加させることであることがシミュレーション結果から明らかとなった。 以上のことから我々は、ガン細胞の初期のInvadopodiaを介した浸潤には、膜上のMT1-MMP発現を抑制するよりもMT1-MMPのVesicle輸送を抑制するほうがより効率よくガン細胞の浸潤を抑制できる可能性を示した。現在、論文の投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初にはモデルを構築した後、本年度中に論文の投稿までを目標としていた。しかし、本年度中にモデル構築までは行えたが論文投稿の準備で手間取ってしまった。後2カ月以内には投稿完了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に構築したモデルについての論文の投稿を速やかに行う。次に、構築したモデルをもとにさらに他の分子への応用を考え、癌浸潤に関わる多様な分子を含んだモデルを構築する。
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