研究課題/領域番号 |
11J05014
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
辻 浩和 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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キーワード | 遊女 / 傀儡子 / 白拍子 / 芸能 / 身分 / 買売春 / 女性 / 集団 |
研究概要 |
1、中世〈遊女〉の生活実態に関わる基礎的事実の解明を進めた。 (1)〈遊女〉の所謂「源氏名」について事例を収集した。 (2)笙騎・艦取女の職掌について明らかにし、呼称の分析から新しく事例を見出した。 (3)『遊女記』の再検討を通して〈遊女〉の所得分配について明らかにした。 2、中世〈遊女〉を身分論的見地から考察した。 (1)絵画史料・文学史料から、〈遊女〉と女房との共通点・相違点を明らかにした。 (2)〈遊女〉の所謂「源氏名」と、一般女性名との比較を行い、集団の再生産について考察した。 (3)豊翳・艫取女の身分的表象・集団内の位置づけ等について主人との関係を中心に明らかにした。 (4)節会史料を中心に、内教坊の組織と妓女の身分に関する事例を収集した。これによって、内教坊が〈遊女〉の源泉の一つであるとする説は成り立たないことが明らかとなった。 3、中世後期〈遊女〉史研究への見通しを得た。 (1)仏教歌謡・猿楽・今様・唱導、および白拍子・曲舞・能など、中世芸能相互の影響関係を示す史料や先行研究の蒐集・整理を行った。 (2)〈遊女〉を賎民とみなす思想について近世までさかのぼって検討した。〈遊女〉の研究史は、被差別民論・非人論だけではなく、日本民族論とも密接にかかわっていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画をおおむね達成したが、論文「<遊女>と女房」および論文「<遊女>の所謂「源氏名」について」の執筆が未達成である。計画後に依頼された原稿を優先したことにより原稿化が遅れたもので、執筆すべき内容の調査・分析については既に終了している。これらの計画については平成25年度に持ち越して達成したい。一方で、依頼原稿の執筆によって<遊女>の芸能に関する芸能史的系譜関係の理解は当初の予想を超えて進展した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進展に伴って、 1、<遊女>の集団内秩序が予想以上に強く働いていること 2、<遊女>集団の本拠地が、芸能の伝承と深く結びついていること が明らかになってきた。このため、当初の計画よりも集団の分析・芸能史的分析を拡充して行う必要を感じている。 また、遊女呼称の語彙史的研究については、既発表論文の中に組み込んで論じたので、当初計画していた単体での論文化は行わない方針である。最終年度には、原稿化の遅れている作業も含め、成果の公表を中心に据えて研究を行っていきたい。
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