研究課題/領域番号 |
11J05078
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
関根 由莉奈 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ナノゲル / リポソーム / ハイブリッドゲル / マイクロレオロジー / DDS材料 |
研究概要 |
本研究は、ナノゲルとリポソームの複合体を架橋点とする生分解性を示すナノ構造制御された新規磯能性ゲルの開発を目的とする。疏水化したプルランが水中で自己組織的に会合して形成する球形20-30nmのナノゲルは、タンパク質や薬剤を安定に内包し得ることからドラッグデリバリー(DDS)材料への研究が展開されている。リポソームは、脂質二分子膜から構成される物質であり、水溶性、脂溶性、両親媒性の様々な物質を内包することが可能である。CHPナノゲルとリポソームを混合すると、コレステリル基を介してナノゲルがリポソームの表面を被覆した複合体が形成する。このナノゲルとリポソームの複合体をビルディングブロックとして用いることで、一つの材料で様々な種類の薬剤やタンパク質を精密に制御して幹部に輸送できるようなDDS材料への応用が期待できる。本年度は、ナノゲル-リポソーム複合体架橋ゲルの作製とその物性評価を目的とした。最初に、反応性基としてアクリロイル基を導入したアクリロイル基置換ナノゲルとdimyristoylphosphatidyl choline(DMPC)、コレステロールで構成されるリポソームから成るナノゲル-リポソーム複合体を得た。架橋剤として末端がチオール化された4本鎖ポリエチレングリコールを用い、アクリロイル基とチオール基のMichael付加反応を利用してマクロゲルを作製した。透過型電子顕微鏡を用いて形成したゲルを観察し、ナノゲルとリポソームから成る複合体が形状を保ったまま内部に分散していることが明らかとした。ゲルの物理的特性を調べるため、極少量(5μL)のサンプルでレオロジー特性を調べることが出来るマイクロレオロジー法を確立した。測定結果より、リポソームの濃度の増加に伴いやわらかいゲルが形成することを見出した。さらにゲルの分解挙動を調べたところ、ナノゲルが先に放出し、その後、リポソームが放出するという2段階の放出挙動を示すことを明らかとした。本ハイブリッドゲルは、種々の薬剤やサイトカインをナノゲルとリポソームに独立に封入しえることから、新規DDSハイドロゲルバイオ材料としての幅広い利用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、ナノゲル-リポソーム複合体を架橋点とする新規ハイブリッドゲル材料の開発に向け、ゲルの作製及び物性評価を目的とした。ここでは、研究の基盤となるマテリアルの調整を完了しただけではなく、極少量のサンプルで材料の物理的特性を調べることが出来るマイクロレオロジー法の確立及びそれらを用いた物性評価、そして、ナノゲルとリポソームが2段階で放出するというゲルの特異的な性質も見出すことに成功した。これらの結果は当初の計画以上に進展したものであり、今後の展開に期待できる成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに得た知見を基に、ナノゲル-リポソーム複合体架橋ハイブリッドゲルの実際のバイオマテリアルへの応用を検討する。具体的には、骨形成を促進するサイトカインや骨吸収阻害剤を含有したナノゲル及びリポソームを用いてハイブリッドゲルを作製し、in vivoにおける骨形成能を評価する予定である。さらに、これまでに得たデータを基に、薬物の放出時間を制御し得るような高機能ハイドロゲルを開発する。具体的には、分岐点の異なるPEG-SHや異なる種類の反応性基を導入したナノゲルを用いて、ハイブリッドゲルを作製し、分解挙動や薬物徐放能を評価する。
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