研究課題/領域番号 |
11J05091
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
仲辻 秀文 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | エナンチオ選択的 / ヨードラクトン化反応 / 求核性触媒 / 亜リン酸トリエステル / ヨウ素 |
研究概要 |
当研究室ではハロゲン化剤とキラル求核剤を直接反応させ、不斉環境と反応点であるヨウ素原子を近づけさせることで、効果的にエナンチオ選択性が発現する新たなハロゲン化法を考案し、検討してきた。その中でキラルリン化合物とNISより調製されるキラルヨードニウムイオンを用いることで、ホモゲラニルトルエン類に対するエナンチオ選択的ヨード環化反応を見出し、報告している。しかし、ヨード環化反応に関しては、等モル量以上のキラルリン化合物が必要であり、この触媒は安定性に問題を有しており、長期保存が困難で、再現性にも問題があった。そこで、ホスホロアミダイトより安定な亜リン酸トリエステルを基本骨格として新規キラル求核触媒の精密設計を行った。この際、触媒性能を比較するため、ホモゲラニルトルエンのヨード環化反応より単純な反応系であるヨードラクトン化反応を用いて行った。その結果、キラル求核性亜リン酸トリエステル触媒1を用いたところ、DIHによるヨードラクトン化反応が触媒的かつ40% eeのエナンチオ選択的に進行した。興味深いことにヨウ素源にDIHとI2それぞれ単独では反応性は低いものの、混合して用いると格段に反応性が向上することが分かった。この添加効果について次のように考えている。本反応系では、NISとキラルホスファイト求核剤から形成するホスホニウム塩が基質と反応し、目的のヨードラクトン体が生成するが、I2を添加しない場合は、このホスホニウム塩の生成速度が遅く、この段階が律速段階となる。一方、I2を添加した場合、NISがルイス酸として作用し、12を活性化することでホスホニウム塩の形成が促進されるため、目的のヨードラクトン体が、効率的に生成したものと考えられる。さらに、触媒の最適化を行ったところ、オルト位にフルオロ基を有する触媒を用いた場合に、良好な反応性と50%eeのエナンチオ選択性が発現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通り、これまで不安定で取り扱いが困難であったホスホノアミダイト求核触媒に代わる新規亜リン酸トリエステル触媒の設計を行い、ヨードラクトン化に適用させることが出来た。この検討の過程で、ヨウ素を添加することで反応性が格段に向上するという興味深い知見を得ることが出来、期待以上の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で、キラルホスファイト触媒を用いたエナンチオ選択的ヨードラクトン化反応の開発を行い、I2を添加することで反応性が飛躍的に向上し、触媒量のキラル亜リン酸トリアリールエステルの存在下、DIHによるヨードラクトン化反応が50%のエナンチオ選択性で触媒的に促進されることが分かった。本触媒は、ホスホノアミダイト触媒に比べ、安定で長期保存も可能である。しかし、まだ十分なエナンチオ選択性が発現していないので、今後更なる触媒の最適化を行い、エナンチオ選択性の向上および基質一般性の拡張を図る
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