研究課題
エイズの原因ウイルスであるHIVの発見以来、精力的にエイズワクチンの研究開発が行われてきたが、ウイルスの易変異性により未だ有効なワクチンは開発されていない。そこで、変異しやすいウイルスタンパク質ではなく、HIVが宿主細胞に侵入する際に利用する第二受容体CXCR4を標的としたエイズワクチンの開発を目指した。HIVとの結合面であるCXCR4細胞外ドメインの立体構造を特異的に認識する抗体を誘導させることにより、HIVの感染進行およびエイズ発症を抑制する治療ワクチンの開発を行う。これまで、タンパク質結晶構造解析情報を基に、テンプレート上にタンパク質の一部(機能部位など)を導入して作製した人工合成タンパク質(template-assembled synthetic protein,TASP)が報告されている。このTASPの手法を用い、triazacyclophane(TAC)scaffold上にCXCR4細胞外ドメイン由来ペプチドを導入してCXCR4細胞外ドメインミメティクを合成する。CXCR4の細胞外領域を再構築したCXCR4 surface mimeticが天然のリガンドSDF-1や抗CXCR4抗体12G5等との相互作用が明らかとなれば、CXCR4の機能解明およびCXCR4が関与する疾患(固形がん転移、リウマチ等)の新たな治療法開発に貢献すると思われる。TAC scaffoldはLiskampらの報告(Org.Lett.2001,3,3499-3502)に基づいて合成した。ワクチン開発において、合成が簡便であることが望ましいため、TAC scaffoldより合成が簡便なテンプレートとしてregioselectively addressable functionalized cyclodecapeptide template(RAFT)も用いCXCR4細胞外ドメインミメティクの合成を行っている。
3: やや遅れている
CXCR4細胞外ドメイン由来ペプチドのテンプレートへの導入法の検討に時間がかかり、計画よりやや進展が遅れている。
一つのテンプレート上に、3ないし4つのペプチドを集積させた抗原分子を作製する際には、立体障害によるペプチドの導入効率の低下を考慮に入れて分子設計を行わなければならない。そこで、スペーサーを介してペプチドをテンプレートに導入する方法や、テンプレートとペプチドのライゲーションに反応効率の高い化学反応を用いるなどの検討を行っている。また、合成したCXCR4細胞外ドメインミメティクは直ちに抗体誘導実験に用い、抗体誘導実験の合間にCXCR4の生理リガンドSDF-1αやHIV-1外被タンパク質との結合活性を評価することで、CXCR4細胞外ドメインミメティクの生理活性評価および物性評価を行う予定である。
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