研究課題/領域番号 |
11J05137
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
前田 徹 神戸大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員DC2
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キーワード | クロキンバエ / 味覚 / 嗅覚 / 情報統合 / 神経投射 |
研究概要 |
私達ヒトは食物の味だけでなく匂いによっても食欲や食嗜好が変化する。これは他の動物でも同様であり、私達はクロキンバエのショ糖に対する摂食行動が1-octen-3-olという匂い物質によって促進されることを平成23年度以前に発見している。また、その匂いがハエの2種類の嗅覚器のうち触角ではなくマキシラリーパルプで受容されてハエの行動を変化させていることもわかっている。 このマキシラリーパルプから脳に投射している感覚神経を蛍光染色し共焦点レーザー顕微鏡で脳を観察すると、嗅覚の一次中枢である触角葉だけでなく味覚の一次中枢が存在する食道下神経節(SEG)にも神経終末が確認できた。さらに、マキシラリーパルプ上の嗅覚感覚子のみから蛍光色素を導入すると、SEGにのみ神経投射が見られた。 そこで、味覚器である口器の唇弁から上記とは異なる蛍光色素で染色しマキシラリーパルプの嗅覚感覚子からも蛍光染色して二重染色を行うと、SEGにおいて両者の神経投射が近い位置に存在することが観察できた。さらに味覚感覚神経のみを染色するため唇弁上のLL-type味覚感覚子のみから蛍光染色しマキシラリーパルプ上の嗅覚感覚子のみから異なる蛍光色素で染色した二重染色のサンプルでは、味覚感覚神経と嗅覚感覚神経間のシナプス結合が起こっていることを示唆するような結果が得られた。このような組織学的結果はまだどこでも報告されていない。 また、このような味覚感覚神経と嗅覚感覚神経の情報統合は、もう1つの嗅覚器である触角では見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度中に終わらせるつもりだった神経投射の観察が完成していないため。ニコンとの協力により高性能な共焦点レーザー顕微鏡や二光子励起レーザー顕微鏡が使用できるようになったため、神経投射図はそう遠くないうちに完成しそうである。
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今後の研究の推進方策 |
共焦点顕微鏡による観察だけでは味覚感覚神経-嗅覚感覚神経間のシナプス接合が本当に存在するのか判断がつかないため、電子顕微鏡による高分解能の機能形態観測を行う予定である。 また感覚情報の電気生理学的な測定も行い、匂いによる影響を判定したいと思う。
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