研究課題/領域番号 |
11J05145
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野地 寿治 東北大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ベンザイン / インドライン / 全合成 / アミノ化 / インドール / teleocidinB / indolactamV / トリプトファノール |
研究概要 |
ベンザインは芳香環内に三重結合を有する非常に反応性に富んだ合成中間体である。芳香環の隣接する2ヵ所を一挙に官能基できる特異な反応性は、ベンゼン環が縮環した複素環を構築するための重要な中間体となると期待される。今年度は、潜在的発癌プロモーターとして知られるteleocidin Bにおける上部9員環ラクタムの効率的な構築を目的として、(-)-indolactam Vをモデル化合物として設定し全合成研究に取り組んだ。 (-)-Indolactam Vの合成研究において、まず、9員環ラクタムの構築法の確立を目指し、ベンザインと同様の反応が期待できるインドラインを用いた分子内環化反応を検討した。研究実施計画に従い、容易に合成可能なトリハロベンゼンから数工程の変換を経て、環化前駆体へ導いた。環化前駆体に対し、鍵反応であるインドラインの発生と続く環化を検討した。しかし、塩基や温度など様々な反応条件を試したが、目的の環化体を得ることはできなかった。 次に、カルボン酸とアミンの縮合により9員環ラクタムを構築する新たな合成経路を検討した。検討の過程で、インドールから1工程で対応する光学活性トリプトファノール誘導体へ導く手法を新たに見出した。すなわち、市販の4-プロモインドールに対し、メチルグリニャール試薬を作用させ、セリンから誘導した光学活性アジリジンを位置選択的に開環することで、トリプトファノール誘導体を合成した。続いて、ベンジル基の除去を行った後、アセトナイド保護と続くインドール窒素部位のトシル保護を行った。得られた保護体に対し、ヨウ化銅、炭酸セシウム存在下、分子間アミノ化反応により、インドール4位ヘバリンを導入することに成功した。次に、トリフルオロ酢酸によりアミノ化体のBoc基とアセトナイドの除去を一挙に行い、アミノアルコールを得た。得られたアミノアルコールに対し縮合剤を作用させ、9員環ラクタムの形成を行った後、第2級アミン部位をメチル化した。最後に、トシル基を除去することで、(-)-indolactam Vの全合成を達成した。現在、各工程の収率の改善および、誘導体合成に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究の目的である(-)-indolactam Vの全合成において、インドラインを経由する9員環ラクタムの構築は実現できていないが、分子間アミノ化反応を経る新たな9員環構築法の確立に成功した。その結果、市販の4-プロモインドールから9工程で(-)-indolactam Vを合成する効率的かつ独創的な合成経路を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、強力な発癌プロモーターとして知られるteleocidin Bの全合成を行う。まず、砲立したベンザインを経る新規多置換複素環合成法により6,7位置換インドリンをグラムスケールで調製する。 得られたインドリンから導いたインドールに対し、(-)-indolactam Vの全合成にて確立した合成経路に従い、上部9員環ラクタムを構築する。種々官能基変換を行った後、下部三環性骨格を分子内Heck反応により構築することで、最短経路でのteleocidin Bの効率的全合成を達成する。 また、Mg(TMP)_2中に含まれるリチウム塩、TMPがベンザイン発生に与える影響について、計算化学を用いて調べる。
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