研究課題/領域番号 |
11J05159
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 敦夫 名古屋大学, 医学部・保健学科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 血栓止血学 / リバビリン / 血液凝固 / 第FVII因子 / 遺伝子発現調節 / 転写伸長反応 |
研究概要 |
本年度は、研究課題である「抗ウイルス剤・リバビリン内服による血液凝固第VII因子発現増強の分子機構解析について、研究計画以上の成果を得ることができた。本年度の具体的な目的は、肝細胞系培養細胞株HepG2を用いて、リバビリンによる第VII因子(FVII)発現誘導の分子機序を解析することであった。まず、定量RT-PCR法によりFVII mRNAを定量測定する解析系を確立し、この測定系を用いてFVII mRNAの増加を解析したところ、過去の報告と同様にFVII mRNAの増加を確認することができ、測定系が精度よく機能していることが確認できた。次に、リバビリンがどのようにFVII遺伝子の発現調節を行っているかその作用機序について解析を行った。リバビリンの作用機序についてはそもそもウイルス非感染細胞における遺伝子発現を記した報告がない。そこで、リバビリンの既知の作用についてFVII遺伝子発現増強への関与を検証した。その結果、細胞に取り込まれたリバビリンが細胞内でリバビリン-リン酸(RMP)となり、プリンヌクレオシド合成系の律速酵素であるイノシン-リン酸脱水素酵素(IMPDH)の阻害を引き起こしていることが示唆された。このIMPDH阻害は、結果的に細胞内GTPの減少及び枯渇を引き起こすと言われており、リバビリンによる細胞内ヌクレオシドプールの枯渇がFVII遺伝子発現に寄与していることが明らかとなった。さらに、リバビリンによるFVII mRNA発現増強調節の詳細な分子メカニズムを解明したところ、FVII mRNAの増加は遺伝子プロモーターの活性化およびmRNA安定性の向上どちらにも起因せず、その原因は転写の一段階である転写伸長の促進にあることが明らかとなった。リバビリンによる作用機序の中でも、このようなウイルス非感染細胞における遺伝子発現調節についての報告はまだなく、非常に興味深いデータだと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画では、本年度から来年度にかけて研究を行う予定だった分子機構の詳細な解析について、本年度以内にほぼ完成させることができ、学会発表・論文作成レベルに到達できたため、計画以上の進展があったと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最大の目的は、リバピリンによる第FVII因子の発現増強機序を解析することで、新規血友病治療薬(止血薬)の開発に資することである。したがって今後は、第FVII因子遺伝子の転写伸長反応を促進している鍵となる分子を同定し、その詳細な機序を解析する。この際、種々の分子が候補に挙がるため、そのスクリーニングとしてマイクロアレイによる大規模スクリーニングを行う予定である。
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