研究概要 |
本年度は、研究題目「抗ウイルス剤・リバビリンによる血液凝固第VII因子発現増強の分子機構解析」について、計画以上の進展があり、研究成果は英文論文としてBiochem.J.に発表した。具体的には、本年度の研究計画は、(1)血液凝固第VII因子発現増強に関与する分子を特定し、さらに(2)リバビリンと同様の作用を持つ薬剤を検索することであった。このうち、(1)血液凝固第VII因子発現増強に関与する分子の特定、については、転写伸長因子とよばれる蛋白質の一種であるELL3が重要であることを世界で初めて発見した。リバビリンは転写伸長因子ELL3の発現を増強させ、さらに転写伸長を活性化することで第VII因子の発現増強を引き起こすことが示唆された。さらに(2)リバビリンと同様の作用を持つ薬剤を検索することについては、免疫抑制剤であり、かつリバビリンと同様IMPDH阻害剤であるミコフェノール酸および6-mercaptopurineが、リバビリンと同様、血液凝固第VII因子の発現を増加させることを世界で初めて見出した。これらの研究成果は、血液学領域の中心学会である日本血液学会ならびに日本血栓止血学会にて発表を行った。また、国際学会では世界最大の血液学会である米国血液学会(ASH)にて発表を行った。全ての研究成果は、欧州の一流生化学雑誌であるBiochemical Journalに投稿し,受理された(Suzuki A,et al.Biochem.J.2013)。本研究の成果である血液凝固第VII因子の遺伝子発現調節機序の解明は、今後の凝固関連遺伝子の発現調節機序の解明の先駆けとなることが期待される。また、本研究によりリバビリンの新たな薬理作用が解明されたことで、血友病等の出血性疾患に対して新たな止血剤の開発が期待され、本研究成果がその一助となることが示唆された。
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