研究課題/領域番号 |
11J05219
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
蓬田 幸人 玉川大学, 脳科学研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 社会規範 / 信念 / 価値 / fMRI |
研究概要 |
社会的な集団の中で共有される価値観としての「社会規範」は、個人の行動原理として内在化され、集団・社会の形成や維持に大きな役割を果たす。この、「社会規範」が集団内で共有され、個人の意思決定・行動を規定していく過程の神経基盤を順次明らかにしていく為、平成23年度は「社会規範による個人の意思決定の神経基盤」の核となる、「規範の重要度(=価値)の大きさの処理」に関わる脳領域の同定を目指した。本研究では、様々な場面での「規範的」行動の主観的な価値・重要度を被験者に判断させ、その大小に対応して活動を変化させる脳領域を、機能的MRIを用いた脳機能イメージング手法で同定した。27人の右利き健常被験者が実験に参加した。被験者にはMRI装置内で、次々に提示される「規範的行動」の順守を示す記述(例:映画館では静かにするetc.)に対して、自分がどの程度賛同するかを8段階のボタン押しで回答してもらい、その際の脳活動を計測した。統制課題として、規範的要素のない一般的な「信念」(例:血液型で性格が決まるetc.)に対する賛同の度合いを問う条件も同様に行った。結果として、「規範的行動」「信念」のような抽象的な価値の重要度の大小処理に共通して関連する脳領域として、両側の尾状核・淡蒼球の大脳基底核、視床、中脳、前頭前野内側部、中・下前頭回、縁上回、小脳、および右の中・下側頭回領域を同定した。また、「規範的行動」特異的に価値の重要度を処理する領域として左楔前部/後部帯状回、両側縁上/右中心後回を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度は、申請計画どおりに機能的MRI実験の計画・実験・データ解析を行い、研究テーマである「社会的な規範/価値観の共有による社会形成に関与する脳神経基盤」のうち、「社会規範による個人の意思決定の神経基盤」の核となる規範の重要度(=価値)の大小の処理に関わる脳活動領域を明らかにした。この発見は当該分野の発展において大きな進歩となる知見であり、10月に同成果を国際学会で発表する予定である。また国際学術誌への投稿・発表も準備中である。既に、申請計画で2年目に予定されていた実験計画の一部にも着手しており、申請研究は順調に遂行されていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究成果を国際学会にて発表する。また、論文として国際学術雑誌に投稿・発表する。研究課題2「価値観の共有が信頼性に影響する過程の神経基盤」解明のfMRI実験を行い、脳活動データの解析を行う。
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