研究課題/領域番号 |
11J05291
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
藤田 啓史 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 小脳 / 小脳皮質 / 小脳核 / プルキンエ細胞 / 神経解剖学 |
研究概要 |
小脳が、前後左右の部位(小脳区分)ごとにさまざまな種類の運動調節などを分担していることは、古くから臨床的に知られている。これまでの解剖学的な研究においても、半側あたり20個以上の小脳区分に応じた神経線維連絡のパタンや分子発現のパタンの違いが示されてきている。しかし、その構築の解剖学的な詳細および生理学的な動作原理は未だ多くが不明である。そのなかでも特に、小脳出力の唯一の源である小脳核に関しては、その動作機構のみならず、その軸索投射の基本構築すら未解決である。本研究では、小脳の行う多彩な機能の本質的動作機構を、小脳核の入出力を中心にして、解剖学・生理学の立場から理解することが目的である。 本年度は主に、小脳区分の解剖学的な本質をより明らかにするため、その形成過程の解析を行った。小脳皮質と小脳核の特定の区分は、胎児期から発達を通してPLCβ4、EphA4、Pcdh10などの分子発現パタンで区別されるため、これに着目した。まず、マウス胎児期の小脳皮質プルキンエ細胞層の構築を、胎児期プルキンエ細胞のマーカー分子と確認されたFoxP2を用いて明らかにした。マウス胎児期のプルキンエ細胞層は、複数のプルキンエ細胞塊が立体的に重なり合った構築をしていた。連続切片を切って、PLCβ4、EphA4、Pcdh10などの分子とFoxP2とに対する蛍光二重免疫染色を行い、小脳区分を立体的に解析した。この結果、胎生17.5日のマウスにみられるプルキンエ細胞塊の区分と、成獣で見られる小脳区分との間にはほぼ1対1の関係があることが明らかとなった。このようにして、成獣での細かい区分のひとつひとつが胎児期からすでに分子発現パタンによって規定される重要な区分であることがわかった。この結果は現在国際誌へ投稿中である。また、本年度の研究の過程で、マウスの成長に伴ってFoxP2の発現パタンが均一パタンから横縞様パタンへ変化することが明らかとなったので、国際誌に発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の主要部分となる小脳核の軸索投射に関する解剖学的解析に関しては、その問題を解決するためには、小脳区分の発生学的区分の解明が必須であることが研究の過程において判明した。そこで、小脳の区分ごとの解剖学的および生理学的違いを解析するうえで重要な、本質的な小脳区分について、小脳の発生を通じて胎生17.5日から生後6日まで追跡する研究に集中した。その結果、成獣の細かな小脳区分が、胎児期の小脳でも、配置のパタンは未発達であるが、区分としては完成しているという、これまで未知の結果を出すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
小脳核の軸索投射に関する解剖学的解析に関しては、その問題を解決するためには、小脳区分の発生学的区分の解明が必須であることが研究の過程において判明した。そこで、小脳の区分ごとの解剖学的および生理学的違いを解析するうえで重要な、本質的な小脳区分について、小脳の発生を通じて追跡する研究に集中して画期的な結果を得た(上記)。今後は、これまで生後6日まで追跡した胎児期からの細かい区分を、従来から知られている成獣の小脳皮質・小脳核の区分に対応させるため、区分の追跡を成獣まで行う。また、胎生17.5日よりも早い時期における区分を調べ、小脳区分の理解を進める。それらを踏まえたうえで、小脳核の軸索投射に関する研究を平行して行う。
|