研究課題/領域番号 |
11J05331
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
ジー ピーター 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | HIV-1 / Nucleotides / DNA Sensor / Innate Immunity / HSV-1 / Phosphohydrolase / Antiviral |
研究概要 |
1)単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に関して HSV-1の感染増殖が、脱アミノ酵素のひとつであるAPOBEC1により抑制されることをはじめて見出し、論文として報告した。APOBEC1は、本来は小腸で脂質代謝に関わる酵素であるが、HSV-1脳内接種ラットモデルでは、ウイルス感染神経細胞にこの蛋白質の発現誘導が起きること、そして、この分子によりHSV-1のDNA配列に特徴的遺伝子変異が起き、ウイルスの増殖が抑制されることを見出した。この結果は、HSV-1脳炎過程においてはウイルス抑制因子としてAPOBEC1が誘導されていることを示している。 2)DNAセンサーについて DNA結合活性を有するp202のHINドメインをDNAセンサーであるAIM2と融合させた分子を作出し、単球系細胞であるTHP1細胞に導入した。その細胞ではHIV感染によりサイトカインを産生する能力が付与されることを示した。しかし、その抗HIV活性とIL-1B産生能はそれほど高くなかった。 3)新規ウイルス抑制因子SAMHD1について 骨髄系細胞に発現し、HIV感染を抑制する分子として新たに同定されたウイルス抑制分子SAMHD1について、その組換え蛋白質を大腸菌で作出し、その酵素の基質特異性を検討した。その結果、種々のヌクレオチドに対してリン酸加水分解活性を示すことを見出した。この結果は、HIV感染細胞内において、SAMHD1は種々の基質特異性を有することから、細胞内ヌクレオチドの代謝過程に対して広範囲の制御能があることを意味する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
HIV感染に関するDNAセンサー分子についての解析研究から、感染に対する抑制分子としてAPOBEC1ならびにSAMHD1に関する研究まで進展させている。
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今後の研究の推進方策 |
SAMHD1についてさらにその酵素学的とウイルス学的解析を進める。最近、SAMHD1の基質はデオキシヌクレオチドであるという結果が複数報告されている。しかしながら、私の結果からはこの酵素は、デオキシヌクレオチドに限らず、多くのヌクレオチドにも対しても、リン酸加水分解活性を示すことがわかった。この相違点を明らかにするために、種々の条件を検討し、SAMHD1の活性化様式とその基質認識ドメインの同定を図る。また、単球系細胞におけるSAMHD1の活性化様式も解明する。
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