研究課題/領域番号 |
11J05372
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中尾 章人 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 電位依存性カルシウムチャネル / 神経伝達物質放出 / 恐怖条件付け学習 |
研究概要 |
神経系において、カルシウムチャネルは神経伝達物質放出やシナプスの可塑性、神経の発達といった、様々な生理応答を担う重要なカルシウムの流入経路である。近年、当研究室ではカルシウムチャネルの形質膜発現を制御する新規タンパク質であるCaprinを同定した。本年度は、昨年度Caprinノックアウトマウスが条件付け後24時間の文脈および手がかり恐怖条件付け学習に障害を示したことを受け、さらに恐怖記憶について詳細な検討を行った。条件付けから35日後に手がかり恐怖条件付け学習の評価を行ったところ、Caprinノックアウトマウスは野生型マウスと比較して有意な差は認められなかった。これらのことから、Caprinノックアウトマウスでは、24時間後の恐怖記憶の形成に障害は生じるものの、記憶の維持には野生型マウスよりも優れていることが明らかとなった。加えて恐怖記憶の消去学習を行った結果、異常は認められなかった。このことから、恐怖記憶の消去学習にCaprinは影響を及ぼさないことが明らかとなった。加えて、ストレス曝露後の行動変化を評価するため、網羅的行動テストバッテリーが一通り終了した後、再び明暗試験及びポーソルト強制水泳試験を行った。Caprinノックアウトマウスは網羅的行動テストバッテリーを行った際、明暗試験では不安様行動の亢進が、ポーソルト強制水泳試験では抗鬱傾向が観察されていた。再度行った試験において、Caprinノックアウトマウスは明暗試験で正常であり、ポーソルト強制水泳試験では有意に抗鬱を示した。これらのことから、Caprinノックアウトマウスのストレス耐性が示唆され、Caprinはストレス曝露後の精神状態の維持に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はCaprinノックアウトマウスの詳細な行動解析により、この新規分子が情動に深く関与することを示した。このことはCaprinの脳高次機能における役割を明らかにする上で、重要な進展であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Caprinノックアウトマウスが示した行動表現型の原因を明らかにするため、細胞レベル、分子レベルで解析を行い、Caprinの持つ生理的な役割を様々な研究階層において明らかにしていく。
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