研究課題/領域番号 |
11J05372
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中尾 章人 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 電位依存性カルシウムチャネル / 神経伝達物質放出 / シナプス可塑性 |
研究概要 |
神経系において、カルシウムチャネルは神経伝達物質流出やシナプスの可塑性、神経の発達といった、様々な生理応答を担う重要なカルシウムの流入経路である。近年、当研究室ではカルシウムチャネルの形質膜発現を制御する新規タンパク質であるCaprinを同定した。本年度は、Caprinノックアウトマウスの示す様々な行動異常の分子基盤の検討のため、多点細胞外電位記録システムを用いて海馬スライスにおけるシナプス可塑性を評価した。短期可塑性の評価のためにpaired-pulse facilitation (PPF)を、長期可塑性の評価のためにlong-term potentiation (LTP)を野生型のマウスとCaprinノツクアウトマウスで比較した。その結果CaprinノックアウトマウスにおいてPPFの有意な減弱、及びLTPの有意な減弱が観察された。このことからプレシナプスにおけるカルシウムチャネル及びポストシナプスにおけるカルシウムチャネル共にCaprinによって制御を受けていることを明らかにした。 これらに加え、欠神てんかんのモデルマウスとして知られているカルシウムチャネル点変異マウスtotleringの海馬における神経ネットワーク活動の異常を明らかにし、その原因がGABA応答の未成熟化にあることを突き止めた。このことにより海馬を原因とする欠神てんかんの併存症としての認知機能障害のメカニズムの一端を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は海馬スライスを用いた実験により、Caprinノックアウトマウスのシナプス可塑性の異常を明らかにした。これはCaprinの欠損によって引き起こされる行動異常の分子基盤の一つであると考えられ、Caprinの脳高次機能における影響を明らかにする上で重要な進展であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Caprinの脳高次機能における役割を明らかにするため、Caprinノックアウトマウスが示した行動表現型の原因を、ネットワークレベル、細胞レベル、分子レベルで解明していく。当該年度はネットワークレベルにおけるシナプス可塑性の異常を明らかにしたが、細胞レベルにおいてはCaprinノックアウトマウスの神経細胞の形態異常が観察されている。この形態異常がどのように行動異常につながるのか、またCaprinが神経細胞の形態決定にどのように関与するのかを明らかにする。
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