研究課題
Fasの欠損や変異による機能の失活が免疫系の細胞に寄与して、ALPS等の自己免疫疾患を引き起こすことが報告されている。本研究にて明らかとなった結果が自己免疫疾患や癌、免疫不全等免疫に関わるあらゆる疾患の治療への応用されることは、本研究の期待する成果の一つである。自己免疫疾患のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomelitis, EAE)モデルを用いてインターフェロン調節因子-3(IRF3)のEAEでの寄与を検討した結果、IRF3欠損マウスにおいての表現型がこれまでの報告から予想に反し、EAEの発症を完全に抑制したことは前年度報告した。その後の解析によりこの表現型が腸内細菌叢の変化によるものだと示唆される結果が得られたのでEAEと腸内細菌叢の関係について調べた。EAEを発症させる際、ミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG)と完全フロイントアジュバント(CFA)をエマルジョン化したものを皮下に1回、百日咳毒素(PTX)をMOG/CFAと同じ日とその2日後の2回腹腔に注射する。これらの処置を施したマウスは通常10日後頃からEAE発症の表現型が現れてくる。今回はEAE発症前の腸内細菌叢を調べるためMOG/CFA注射後3日、6日、9日の糞便を回収し、糞便中のDNAから細菌の16SリボソーマルRNAの配列を増幅させ、次世代シークエンサーで解析した。解析の結果から、PTXがEAE発症前の腸内細菌叢に影響を与えていることが明らかとなった。さらに、腸内細菌叢は宿主側の抗菌ペプチドやムチンの産生により変動することが報告されているため該当遺伝子の発現量を解析した結果、抗菌ペプチドやムチンの産生量の変化にもPTXが関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究テーマを進めていく上で自己免疫疾患のモデルであるEAEと腸内細菌叢の関連性を示唆するデータを得ることができた。自己免疫疾患の治療への応用が期待されるような基礎研究は本テーマの課題の一つであり、その一端を示すデータを得られたことは研究が順調に進展していることを示すものである。
今年度得られた結果より、EAEの発症が腸内細菌叢の変化と密接に関与していることが示唆された。今後は腸内環境の変動のメカニズムとEAE発症メカニズムとがどのようにリンクしているのか解析することにより、自己免疫疾患における根本的な治療に応用できるような知見を得ることを目指す。また、同時に本研究のメインテーマである免疫細胞(特に樹状細胞)の成熟メカニズムやアポトーシスやオルガネラの形態変化の寄与を検討していく。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 49 ページ: 19884-9
10.1073/pnas.1320145110.