研究課題/領域番号 |
11J05410
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
染矢 雅之 独立行政法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 特別研究員(PD)
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キーワード | アジア沿岸域 / 二枚貝 / 臭素化ダイオキシン / 自然起源 / DR-CALUX / OH-PBDEs / MeO-PBDEs |
研究概要 |
研究目的の一つとした「DR-CALUXを用いた臭素化ダイオキシン及び未知のダイオキシン類縁化合物の毒性影響評価」の一環として、自然起源と考えられる3臭素化体のダイオキシン異性体、137-TriBDDと138-TriBDDの標準試料を入手し、DR-CALUXアッセイを用いたダイオキシン様活性の測定を実施した。活性の程度は、TCDDに対する比活性として評価した。その結果、137-TriBDD(0.0043)と138-TriBDD(0.0017)のEC20値を基に算出した比活性は比較的高く、mono-ortho PCBsやOCDDよりも1-2桁高いことが判明した。算出した比活性を基に、先行研究で示したアジア沿岸域から採取したイガイのダイオキシン様活性総量に対する137-TriBDDと138-TriBDDの寄与率を算出したところ、その寄与率が10%を超過する海域も一部みられた。この結果は、二枚貝などの海産物の摂取を通したダイオキシンによるヒトの健康影響を評価する際、人為起源のみならず自然起源のダイオキシンに関しても考慮する必要があることを示唆しており、本研究はその基礎的知見を提供することができた。 また、目的の一つとした「海洋起源と考えられる臭素化ダイオキシン類の生成メカニズムの解明」研究を進めるため、アジア沿岸から採取した二枚貝を対象に、自然起源の臭素化ダイオキシンの前駆物質と考えられるOH-PBDEsとMeO-PBDEsの化学分析を実施した。その結果、アジア沿岸域の二枚貝からは、高濃度のOH-PBDEsとMeO-PBDEsが検出された。また、検出された異性体組成から、その大半は、海藻類やバクテリアが生成すると考えられる自然起源の異性体であることが明らかとなり、今後、自然起源の臭素化ダイオキシンの生成メカニズムの解明研究に踏み込んでいく際の重要な基礎データを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイオキシン類縁化合物を包括的に評価するバイオアッセイであるDR-CALUXの試料前処理を含む実施体制の整備が完了すると共に、化学分析値とアッセイ値を比較する際の臭素系ダイオキシン類の標準物質の比活性(REP)の精密測定の実施、また実試料(二枚貝)を対象とした自然起源の臭素化ダイオキシンの前駆物質と予想されるOH-PBDEsとMeO-PBDEsの化学分析にまで着手できており、概ね進捗は堅調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、二枚貝試料の有するダイオキシン様活性の評価(バイオアッセイ)を実施すると共に、活性に対する寄与が疑われる塩素化ダイオキシン類、および人為・自然起源含めた臭素系ダイオキシンの化学分析を実施し、アジア沿岸域におけるダイオキシン様活性物質による包括的な汚染実態の把握を試みる予定である。加えて、自然起源と考えられる臭素化ダイオキシンの化学分析データに関して、前駆物質と考えられるOH-PBDEs、MeO-PBDEsなどの化学分析データとの関係性を異性体別に詳細に評価し、その生成メカニズムについて検証する予定である。
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